部下との面接で、上司が使ってはいけない言葉がある。働き方改革の支援を行うクロスリバー代表の越川慎司さんは「それは『よろしくお願いします』という言葉だ。優秀なリーダーは、そうした言葉で面接を始めない」という——。

※本稿は、越川慎司『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

面談をしている様子
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腹を割って話せる「心理的安全性」を担保するべき

上司と部下の一対一の対話で、かしこまった状況になると、言いたいことが言えなくなります。腹を割って話せる心理的安全性が担保されないと、不必要な気遣いによって生産性が落ちることは25社の実験でもわかっています。

カジュアルな1ON1ミーティングに慣れていない管理職は、どうしても「よろしくお願いします」という言葉で始めてしまいがちです。

一般社員に匿名回答でヒアリングをすると「面談のような雰囲気になると会話ができない」「評価されていると思うと口数が少なくなる」といったコメントが出てきました。

活躍社員や優秀なリーダーの場合はどうかといえば、「よろしくお願いします」と言って会話を始めるケースは少ないことがわかりました。

「よろしくお願いします」と始めると、相手が面談だと思って心を閉ざしてしまうのがわかっているからです。活躍社員たちは「今日は時間をとってくれてありがとう」というような感謝やねぎらいの言葉をかけることから始めていました。

部下のテンションを最も上げる「間接承認」

最も効果的なのは間接承認です。

「ヤマダさんがあなたのことですごく感謝していたよ、ありがとうね」といった言葉がそうです。こうした間接承認は相手のテンションを大きく上げることがわかりました。実際の1ON1ミーティングの中でも取り入れる実験をしています。

「よろしくお願いします」を禁止して、「ありがとう」や間接承認から始めるようにすると、対話のスタートが順調になることが確認できました。面談のような雰囲気にはなりにくいので、すぐに会話に入っていきやすいのです。

定量的な効果は測れなかったのですが、「よろしくお願いします」を禁止したことに同意した管理職は78%いて、実際に実践してくれました。その効果は実感できていたのだと思われます。

優秀なリーダーはオンライン会議で座る位置を変える

一対一で対話をする際は、座る場所によっても相手の捉え方が変わることもわかりました。

真正面に座ると対決姿勢になって、言い争いが多くなると活躍社員から聞きました。一方で、面接時や関係構築のできていない新人と話をするときは正面に座ったほうが信頼度を高めやすいと、活躍社員がコメントしていました。

さらに驚かされたのは、ある優秀なリーダーがやっていたことです。その人は、自分の画像をオンライン会議で表示する際には、近づけたり遠ざけたりする工夫をしていたのです。そのリーダーに細かくヒアリングをすると、相手との関係性によって座る位置を変えているのだと言います。