立憲民主党内で夏の参院選を見越して「消費減税」を公約化しようとする動きがある。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「野党第1党規模の政党が減税を訴えたところで、大幅に議席を増やす力がないことは過去の歴史が証明している」という――。
国会内で開かれた立憲民主党有志議員による勉強会の設立総会で、あいさつする末松義規衆院議員(中央奥)=2025年3月12日午後
写真提供=共同通信社
国会内で開かれた立憲民主党有志議員による勉強会の設立総会で、あいさつする末松義規衆院議員(中央奥)=2025年3月12日午後

立憲内に「消費減税」公約化を求める動き

立憲民主党内でまたぞろ「消費税減税」を迫る動きが目立ってきた。単なる政策論ならいざ知らず、夏の参院選の公約化を求める声もある。

加えて、今夏の参院選へ無所属で出馬することを表明した元明石市長で「減税派」の泉房穂氏について、立憲民主党が国民民主党などと共に「支援する方向で調整」と報じられている。

政権の選択肢となるべき野党第1党が、いつまでも「消費減税の誘惑」に振り回されるさまを見るのは、本当に頭が痛い。

立憲民主党は昨秋の衆院選で約50議席を増やし、自民党に対峙する「政権の選択肢」の立場を確立した。自民、公明両党が「少数与党」と化し、立憲は過去の野党第1党とは比較にならないほど、政治を動かすことへの重い責任を負っている。石破内閣の支持率が急落するなか、今や立憲は「政権を取って代われる政党」として有権者の信頼を得ることが求められている。

にもかかわらず、立憲の党内に①政権選択選挙で勝てるテーマではない、②党の「目指す社会像」にも逆行する、③しかも昨秋の代表選で退けられている――「消費減税」という施策にとらわれる政治家が、少なからず存在するのが残念だ。

立憲が「消費減税の誘惑に負けてはいけない」理由を、上記3点の観点から説明したい。

30年以上前の「成功体験」が忘れられない

①政権を目指す政党は「消費減税」で選挙に勝てない

野党勢力の間で「消費減税」を叫ぶ声が強いのは、30年以上前の「成功体験」の影響が尾を引いているのだと思う。消費税が導入されたのは1989年4月、自民党の竹下政権時代。3カ月後の参院選で、当時の野党第1党・日本社会党が大勝し、自民党の宇野宗佑首相を退陣に追い込んだ。社会党の土井たか子委員長が「山が動いた」と語ったことは有名だ。

しかしこれ以降「野党第1党が消費税に反対の立場を掲げて選挙で成果を上げた」選挙は思いつかない。1989年参院選にしても、当時の自民党はリクルート事件という、現在の状況に勝るとも劣らない「政治とカネ」問題で国民の大きな批判を受けていた。消費税「だけ」で野党が勝利したと断言するのは難しい。