「減税」で議席を伸ばせるのは中小野党だけ

消費減税を求める声は政治的に大きい。選挙基盤の弱い立憲議員があおられる気持ちも理解できないわけではない。だが、過去の選挙を振り返っても、消費減税で獲得できる票は限られている。それらの票は、従来減税を叫び続けてきた中小野党に向かう。個々の立憲議員の選挙対策という点でも、この層を狙う選挙戦術は得策とは言えない。

党全体の選挙対策という意味でも同様だ。消費減税は中小野党の議席を数議席程度増やす効果はあるだろうが、政権を目指す政党が獲得すべき議席を得るにはまったく足りない。

「政権の選択肢」たる立憲が耳を澄ますべきは、減税や国債発行を繰り返すことで将来世代にしわ寄せが及ぶことを恐れる、声なき有権者の声だと思う。

木製ブロックであらわす消費税増税
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消費減税で得をするのは低所得者か、お金持ちか

②「消費減税」は立憲民主党の「目指す社会像」に逆行する

ざっくり言えば、減税とは基本的に「国の税収を減らす=小さな政府=自己責任の社会」を目指す政策であることは押さえておきたい。

立憲民主党が掲げる社会像とは「所得再分配による格差是正を図り、自己責任社会を終わらせる」こと。そのためには「おおやけ」の役割を再構築する必要があるし、一定の税収が必要だ。政治不信が蔓延している現在、増税を簡単に言える環境にはないが、少なくとも積極的に減税を叫ぶことは、立憲の「目指す社会像」が何なのかをわかりにくくしてしまう。

そもそも、同じ「消費減税」を唱えていても、実は政党や政治家によって「目指す社会像」が真逆であることが少なくない。

立憲の一部を含む野党勢力は、消費税の逆進性に着目し「低所得者政策」の観点から減税を訴える。一方で日本維新の会など新自由主義的な勢力が消費減税を言う時は「高額の消費を行う富裕層がより大きな恩恵を得る」ことが意識されている、とみるべきだ。

低所得者の生活を支えるつもりで消費減税を実現しても、結果として富裕層が大きく減税されて国の税収が減り、結果として高額療養費制度の負担上限額引き上げのように、国民の命を直接脅かす事態を生む可能性がある。そういうことにも思いを致すべきだ。