相手に伝わる資料を作るにはどうすればいいのか。働き方改革の支援を行うクロスリバー代表の越川慎司さんは「文字色を赤くしがちだが、目がチカチカする色は敬遠される。最もインパクトを残せるのは意外な“あの色”だ」という——。

※本稿は、越川慎司『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

資料に掲載されている多様なグラフ
写真=iStock.com/takasuu
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「文字ぎっしりはうんざり」「疲れない資料がいい」

クライアント各社から5万枚以上のパワポスライドを収集し、文字数や色、図形の有無などについて、AIを使ってパターン分析をしました。

「なぜ人を動かせたのか?」を探るために、各社868人の意思決定者(予算を持っている権限者)に対面ヒアリングとウェブアンケートを行い、いくつかのパワポ資料のパターン比較(A/B比較)と、自身の意思決定に影響を与えた資料の提示をお願いしました。そうしたことからも「人を動かす資料」の特徴がわかってきました。

資料の中身はもちろん重要ですが、デザインの特徴だけを見ても、資料作成の本質的な目的を再確認することができるのです。

意思決定者は以下のようなコメントを多くしていました。

「文字ぎっしりの資料はうんざりする」
「わかりやすい資料がいい。受け手が理解するのにエネルギーを使わない疲れない資料」
「大切なことに絞った資料がいい」

こうした言葉からわかるのは、人を動かすことができるのは“重要な点に絞った資料”だということです。調査した意思決定者のうち78%は、10秒以内で「わかりやすい資料かどうか」を判定しているとのことでした。

「要点は何?」を10秒以内でわからせる

わかりやすさの判定基準は「10秒以内で①資料の要点を理解できること、②それを記憶しておくべきかの判断を終えられること」です。

②についてはコントロールできない部分もありますが、①の「要点は何か?」を10秒以内でわからせるようにすることはできます。

多くの人は、自分の伝えたいことをそのままスライドに書き起こした資料を作りがちです。限られた時間でできる限り多くのことを伝えたいので、必然的にスライド内の文字数が多くなります。それを根拠のない自己満足のデザインでまとめて、凝ったように見えるだけの資料を作ってしまうのです。

しかし、実際に相手を動かせるのは、大切なポイントに絞って10秒以内に「要点は何か?」がわかるようにしたシンプルな資料です。

この点を押さえて資料作成に臨んだ2万3000人の資料作成講座(クロスリバー主催)の受講者は、94%が「効果を実感した」と答えていました。

伝える資料ではなく“伝わる資料”を目ざさなければならないのです。