この原則は、スライドを10秒見たときに何が頭に残りやすいかを答えてもらった際に、色や文字の大きさといった要素のほかに、左斜め上に配置された文字や図形に目が止まりやすい傾向に気づいたことから発見できたものです。その次にどこが印象に残るかを聞くと、やや中央に移動して目線が右斜め下に移っていたのです。

資料を見る人
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「目線を右に移動する」習性を生かそう

似たテーマについて解説している書籍の中には、資料を見るときは視線がZ型に動くものだと書いているものもあります。Z型とは、名称が示すとおり、左上から水平移動して右上へ行き、その後、右上から左下へ目線が落ち、最後は左下から右下へ横スライドする目の動きです。

私たちの実験においても、まず目に留まったものが印象に残り、そこに書かれた文章に興味を持てば、目線を右に移動してさらに文章を読むという傾向があることが判明しています。Z型とイコールではありませんが、それに近い目の動きです。

対角線の法則は、私が講師を務めるパワポ講座の受講生2万3000人のうち78%が実践していて、81%が「視線を動かすことに効果があった」と答えました。「配置するアイコンの数は1スライドに4つ以内。オンライン会議であれば1つ」というルールも適用したところ、62%が実践し、82%が効果を実感していました。

気遣いでいっぱいの“忖度資料”はほぼ使われない

1万9000人分の資料の作成状況を調べたところ、約23%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていることがわかりました。補足資料や緻密なデータ、詳細な説明文などがそれにあたり、必要だろうという憶測で作成されていたのです。

上司側の協力を得て匿名回答でヒアリングしたところ、こうした忖度そんたく資料のうち80%以上のものは実際には使われていませんでした。中にはページがめくられてさえいないものもありました。必要のない資料の作成に部下が時間を割いていたことを知り、不快に思う上司もいたほどです。

資料の「差し戻し」は、作る側と見る側双方の生産性を落とします。じっくりと時間をかけて入念に作った資料が最後の最後でダメ出しされ、作り直すことになれば非効率的です。資料の作成者だけでなくダメ出しする側も、時間とエネルギーが奪われます。