芸能活動は「支障なく続けられる」としていたが…
中居正広氏は、「はだかの王様」だった。SMAPが1996年に出した曲「はだかの王様 シブトクつよく」の歌詞を地で行く彼には、誰も何も言えないのではないか。誰か、彼のそばにいて、助けてあげてほしい。そう感じさせるのは、歌詞の冒頭に次のようなフレーズがあるからである。
「反省なんか 一応してみせるけど 心の中じゃ 真っ赤な舌を出してさ」
中居氏は、心の底から反省しているわけではないのではないか。そう思わせる引退だった。
「トラブル」を起こしたことが、まずもって大きな間違いだった。そして、たとえ「守秘義務」があったとはいえ、1年半もの間、活動を続けてきたのも、誤りだった。
何より、1月9日付で自身の事務所「のんびりなかい」のウェブサイトに掲出した「お詫び」と題する文書が、決定打だった。「トラブルがあったことは事実です」としながらも、「示談が成立し、解決していることも事実です」とし、「相手さまのご提案に対して真摯に向き合い、対応してきたつもりです」と述べている。
「はだかの王様」ぶりを印象づけたのが、次の文章だろう。
「トラブル」から現在までの「芸能活動」についての弁明ともとれるものの、しかし、これからも続けていく、そんな意思表示と受け取るほうが素直である。
「トラブル」の内容は明らかにされていないし、これからもされないとみられる。きわめて重大な事案と報じられており、その点で中居氏が非難されている。ただ、それとともに、中居氏が、自分に対する世間からの視線をつかめていなかったために、引退まで追い込まれたのではないか。
2週間前の「お詫び」は何だったのか
1月23日付で出された文書は「ご報告」である。2週間前には、「支障なく続けられることになりました」と述べていた「芸能活動」を「引退」するという。
この2週間に、何があったのか。
フジテレビの記者会見があったり、CMが次々に「AC」に差し替えられたり、といった、さまざまな動きがあった。おりしも、23日は、フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングスが臨時取締役会と社員向け説明会を開いている。
「これだけたくさんの方々にご迷惑をおかけし、損失を被らせてしまったことに申し訳ない思いでなりません」というのが、引退の大きな理由といえよう。
それなら、1月9日付の「お詫び」について、とりわけ、芸能活動にかんする方針を180度変えた経緯について、ひとことでも説明しても良かったのではないか。
「はだかの王様」ぶりが、つまり、もう、誰も、中居氏に対して、何も言ってくれていない様子が想像される。
けれども、ここで、中居氏を糾弾したいわけでは、まったくない。かといって、中居氏を庇いたいわけでもない。メディアスクラムはいけません、といった、おためごかしのお説教を流しても、無意味だからである。
それよりも、中居氏には、せめて最後に、本当に思っていることをできる範囲で、ぜんぶ伝えてほしかった、そう思っているだけである。