赤文字では意外と誘導できない

人は五感を通じて情報を脳に取り込みます。より長く、そして鮮明に覚えてもらうためには、視覚を通じて情報を入れるのが効果的であると昔からいわれています(『産業教育機器システム便覧』1972年)。実際、活躍社員も相手の視覚を意識して資料を作成していました。

そこで、資料においても、相手の視覚を意識することで「伝わってほしいことに誘導できるか」を確かめる実験を行いました。

実験を進めていくと、赤文字では意外と人を誘導できないこと、彩度が高い色は見にくいためなのか敬遠されがちなことなどがわかりました。黄色やオレンジも、アクセントカラーとして使われがちですが、スライドの中で黄色やオレンジが占める割合が多いと、目がチカチカして集中できません。プラス効果のあるアクセントにはならないのです。

最もインパクトを残せる色は…

実験の結果、最も視覚を誘導しやすいと判明したのは、意外にも「白」でした。とくに効果があるのは、余白の「白」と白抜き文字の「白」です。

伝わってほしいことの周りに余白を増やし、黒い背景などに白抜きの文字を使うことで効果的にインパクトを残せるようになるのです。まず伝わってほしい結論が目に入るようにして、そこから詳細説明に視線を移すようにします。

このルールを頭に入れておけば、デザインをどうするかと悩む時間は減り、「何が最も重要なのか」を考えるための時間に割り振ることができます。

「白抜きの文字」は、聞き手の記憶に長く残っている確率も高くなりました。そこで、資料の中で重要な文字だけを切り出して別スライドにして、黒背景で白抜き文字を強調したところ、聞き手の印象に強く残すことに成功しました。白抜き文字でまず結論を伝えて、「詳細は次のスライドに記載してあります」と発言することで、伝わってほしいことをうまく伝えられたのです。

アイコンや画像は「対角線上」を意識する

資料を見るときなどには左斜め上から右斜め下の対角線に沿って目線が動きます。この対角線上にアイコンや画像を配置すると、約8割の閲覧者がそのアイコンや画像と、その横に配置された文字を読むことが調査でわかっています。

ルールなく配置された場合と、対角線上に配置した場合を比べると、65%の人は後者がわかりやすいと答えています。それも、即答していました。