2024年末、政府は25年度の当初予算案を閣議決定し「高額療養費制度」の負担上限額が引き上げられることになった。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「現役世代の家計はこれからますます乏しくなる」という――。
手術をする外科医
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利用者無視の「高額療養費制度」自己負担上限額の引き上げ

2024年の年末押し迫った時期に、政府は高額療養費の自己負担額の大幅引き上げを閣議決定し、2025年度の予算案に盛り込みました。

この決定を聞いて、高額療養費制度を利用している患者などは困惑するばかり。厚生労働省は、そうした人たちからのヒアリングは一切せず、高齢者に比較的多い疾患例を基に議論しているのです。

現在、高額療養費制度は70歳未満と70歳以上では負担割合が違いますが、この高齢者のデータを働く全世帯に当てはめて、すべての世帯の金額を引き上げようというのはあまりに乱暴な話です。

自身ががん治療をしながら、または病気の家族を支えながら、それでも働き続けなくてはならない現役世帯などからは、怒りの声が上がっています。

高額療養費制度とは

「高額療養費制度(※)」とは、家計に対する医療費負担が莫大にならないように配慮した制度。

※公的医療保険適用外の診療にかかる費用は対象にはなりません

日本の医療制度では、あらかじめ年齢によって医療費の窓口負担額を、原則75歳以上は1割、70〜74歳は2割(70歳以上で現役並み所得者は3割負担)、7〜69歳までは3割、6歳まで(未就学児)は2割と決められています。ただし、それぞれが決められている負担額の全額を支払わなくてはならないわけではなく、自己負担額の上限が決められているので、その限度を超えない範囲での支払いで済むようになっています。