メンタルを病む社員が、20年で2.3倍に急増している。社員のメンタルを守るのは重要な経営課題だ。しかし、多くの中小企業で何の対策も取られていないことが調査でわかった。その背景には、経営者の無理解と誤解があった――。

※本稿は、成田恵、市村洋文著『社長、30分だけ私の悩みを聞いてください!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

助けを求めるビジネスマン
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企業内で、急増する社員のメンタル問題

日本では今、働く人の心の不調が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の「患者調査(令和5年)」によると、精神疾患を有する人は約603万人に上り、過去20年間で約2.3倍に増加しました。その内訳の多くを、うつ病や不安障害といったストレス関連疾患が占めています。精神障害による労働災害認定件数も年々増加傾向にあり、従業員のメンタルヘルスの問題は、もはや個人の問題ではなく、企業の経営課題として取り組むべきテーマとなっています。

こうした背景のなか、企業が主導するメンタルヘルス対策の重要性が増しています。メンタルヘルス対策とは、厚生労働省の定義では、従業員の心の健康を保持増進するための組織的な取り組みを意味します。具体的には、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための研修やストレスチェックの実施、相談窓口の設置や休職者の職場復帰支援プログラムなどを指します。企業全体の健康文化を育てる包括的な活動です。

厚生労働省の「労働安全衛生調査(令和5年)」によれば、メンタルヘルス対策を実施している企業は63.8%でした。この数字だけ見ると多くの企業で十分対策されているように見えるかもしれません。しかし、従業員数別でその内訳を見ると格差があることがわかります。100名以上の事業所では96.6%、300人以上では99.8%と、ほとんどの企業がなんらかの対策を実施しています。一方で、30~49名規模になると71.8%に下がり、10~29名規模では56.6%まで下がります。つまり、大企業が平均値を押し上げているだけであり、実際には何も対策を講じていないままの中小企業が依然として多いことがわかります。

しかもここで問題になるのは、“導入している”という事実そのものではなく、その内容と実効性です。ストレスチェックを年に一度実施するだけ、形ばかりの相談窓口を置いているだけで利用されていないなど、「形だけの対策」にとどまり、支援につながる仕組みとして機能していない例も少なくありません。

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