メンタルへルス「経営者の3つの誤解」
メンタルヘルス対策を進めていく上で、組織のトップである経営者の意識と理解は極めて重要です。経営層がメンタルヘルス対策を経営課題として位置づけ、その重要性を認識し、積極的に関与することで、企業全体の取り組みが進みやすくなります。
逆に経営者がメンタルヘルスに無関心だったり誤解があると、それは社内の文化や風土となり、従業員も不調を隠したり、相談をためらったりする傾向が強まります。ありがちなのは、以下のような誤解です。
誤解1.「メンタルヘルス対策はコストでしかない」
メンタルヘルス対策に消極的な理由として多いのが「対策には費用がかかるだけで効果が見えない」という認識です。確かに専門家の相談体制整備や研修には一定のコストが伴いますが、最も基本であり、最も効果的な対策は、「経営者や上司が社員の話を聞くこと」です。これはお金のかからない、しかし非常に大きな効果をもたらす取り組みです。人は「話を聞いてもらえた」と感じるだけで、安心感を得て自ら状況を立て直す力が生まれます。逆に、忙しさや無関心から機会を怠れば、社員は不満や悩みを一人で抱え、メンタル不調につながる可能性が上がります。
外部の専門家に頼る場合でも、現在は無料・低コストで活用できる公的支援は多数あります。たとえば厚生労働省の「職場のストレスセルフチェック」や、地域産業保健センターが提供する健康相談サービス(従業員50人未満の事業所向け)は無料で利用可能です。産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策・両立支援促進員による助言や指導も受けられます。また年度によっては導入費用に対する助成金制度もあり、こうした制度を活用すればコストを抑えつつ、社内に取り入れることが可能です。
もちろん組織の健全化や活性化のためにより実効性のある対策を取り入れたい場合は、コストをかけてでも専門家によるコンサルテーションや相談窓口、研修を導入すべきでしょう。
厚生労働省の調査によると、メンタル不調によって長期休職・退職者が出た企業は全体の約1割に上ります。これは決して他人ごとではなく、どの会社でも起こり得る問題です。社員が1人休職・離職すれば、代替要員の確保や生産性低下で企業は大きな損害を受けます。さらに従業員が幸せで前向きな心持ちで働ける組織は、生産性や営業成績が向上し、業績自体が高まります。
メンタルヘルス対策にかけるコストは単なるリスク対策ではなく、企業価値向上のための「投資」と捉えるべきです。
