誤解3.「メンタルヘルスは個人の問題だ」

「社員の心の問題に会社が関与する必要はない」と考える経営者もまだいるかもしれません。しかし、この見方も誤解です。厚生労働省による調査によれば、職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.2%に上ります。

職場生活で強いストレスや悩みを抱えている人の割合と、その内容
成田恵、市村洋文著『社長、30分だけ私の悩みを聞いてください』(プレジデント社)より

その主な要因は、「仕事の量や質」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」「仕事の失敗、責任の重さ」など、ほとんどが職場環境や業務上の要因です。メンタルヘルス不調が生じた場合、それを「本人の性格の問題」「私生活の問題」と片づけてしまうのは、現実を見誤ることになります。なぜなら、長時間労働、過剰なノルマ、評価制度の不公平、上司の指導スタイル、ハラスメントの横行など、組織の構造やマネジメントのあり方が、社員のメンタルヘルスを左右しているからです。

企業には、従業員の生命や健康を守る「安全配慮義務」が法的に課せられています。心の健康も当然その範囲に含まれ、過重労働や職場の人間関係に起因するうつ病や自殺が発生した場合には、企業側の責任が問われる可能性があります。最悪のケースにならないうちに、会社は適切な対応を取る必要があります。

また従業員のメンタルヘルスは組織の生産性や離職率に直結しており、決して個人だけの問題ではありません。従業員の心身の健康が守られてこそ本来のパフォーマンスが発揮され、生産性向上や離職防止につながります。メンタルヘルス対策は組織全体の安定と成長に関わる重要な経営課題なのです。

成田 恵(なりた・めぐみ)
臨床心理士

1990年生まれ。立教大学現代心理学部を卒業後、早稲田大学大学院にて臨床心理学を専攻し修士課程修了。心療内科やカウンセリングルームにおいて、認知行動療法(CBT)を中心とした支援に従事してきた。うつ、不安、PTSDといった幅広い症状に対応し、実践的な経験を積む。2020年より国立精神・神経医療研究センターに所属し、PTSDや摂食障害に対する治療研究に参加。持続エクスポージャー療法認定セラピストとして、トラウマ領域の実践にも携わる。現在はファーストヴィレッジ株式会社メンタルヘルス事業部にて、組織におけるメンタルヘルス向上を支援。科学的根拠に基づく心理学と実務の橋渡しをテーマに、企業向け研修や制度設計のサポートを行っている。

市村 洋文(いちむら・ひろふみ)
ファーストヴィレッジ社長

1959年北海道生まれ。立教大学社会学部に入学。大学時代に流行の先を読み、学生向けスキーツアーを企画しビジネス化に成功。大学時代の売上60億円。83年卒業後、野村證券に入社し、30歳で月に600億円の売り上げを上げる証券マンに成長する。野村における最年少記録を樹立。37歳で野村證券の最年少支店長となる。野村において営業マン2万名の営業指導者となり、「野村證券伝説の営業マン」と呼ばれるようになる。39歳のとき、野村證券からKOBE証券(現インヴァスト証券)へヘッドハンティングされ、当時最年少での総合証券社長として活躍。280億円の預かり資産を1兆4400億円に増やし、2006年にKOBE証券を上場させることに成功。上場時価総額400億円をつくり、47歳でKOBE証券グループの社員数2500名の上場会社組織をつくり上げる。2007年、48歳で日本最大のビジネスマッチング・顧客紹介の会社をつくるべく、ファーストヴィレッジ株式会社を設立。38000人の経営者のネットワークをつくりあげる。著書に、『1億稼ぐ営業の強化書』(プレジデント社刊)など。