誤解2.「メンタル不調は本人の甘え・弱さにすぎない」

今もなお、「うつになるのは本人の甘え」「根性が足りないから弱るのだ」といった誤解や偏見が根強く残っています。しかし、これは明確に間違いです。精神疾患は意志や性格の問題ではなく、脳の働きや神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる「脳の病気」です。糖尿病や高血圧と同じように、誰にでも発症し得るものです。

成田恵、市村洋文共著『社長、30分だけ私の悩みを聞いてください!』(プレジデント社)
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うつ病や不安障害のようなメンタルヘルス不調では、脳の前頭前野や扁桃体などの働きが変化し、感情のコントロールや思考の柔軟性、判断力が低下します。つまり「考え方を変えれば治る」「気の持ちよう」といった精神論では解決できません。本人の努力だけでどうにかできるものではなく、体の機能の一部が低下している状態なのです。また、メンタル不調は「弱い人がなる」のではなく、むしろ責任感が強く、真面目で努力家な人ほど発症しやすいことが知られています。完璧主義で頑張りすぎるタイプの社員が、限界を超えても自分を追い込み続け、結果として心身が悲鳴を上げる――そんなケースは臨床の現場でも数多く見られます。これは「甘え」ではなく、「働きすぎる真面目さ」が裏目に出てしまった結果なのです。

経営層がこうした正しい理解を持たず、「本人の問題」と切り捨ててしまうと、社員は安心して相談できなくなります。結果として、不調を抱えたまま業務を続け、症状を悪化させて長期休職や離職につながるリスクが高まります。さらに、周囲の社員にも「弱みを見せてはいけない」という空気が広がり、職場の健全さが失われていきます。

経営者自身が正しい知識を身につけ、社員の不調を「甘え」ではなく支援すべき課題と認識することが重要です。