健康で長生きするには、どうすればいいのか。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也教授は「健康診断で“数値がよかった”と安心してはいけない。日本人は体質的に食後に血糖値が急上昇しやすく、“糖尿病”を見逃す可能性があるからだ」という――。(第3回)

※本稿は、坂本昌也『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

自分の指で血糖値を確認する人
写真=iStock.com/Noppawan Laisuan
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親が糖尿病であれば、子への遺伝リスクは3倍

糖尿病は生活習慣病のひとつですが、ほかの病気と同じように生活習慣だけでは説明できない部分もあります。その要因と考えられるのが遺伝です。

親が糖尿病の場合、その子どもが糖尿病になるリスクは約3倍に高まるとされ、親族にいると約2倍高まるといわれています。といっても、遺伝的な要素を持っているからといって、必ず糖尿病になるわけではありません。遺伝の影響は3~4割と考えられています。

ただし、同じ生活をしていても、遺伝的な要素を持っている人は持たない人に比べて発症年齢が若く、30代、40代で発症する人もいます。また、合併症が進みやすく、腎臓や神経へのダメージが出やすいともいわれています。

親や親族に糖尿病の人がいることがわかったら、「人より早めにサインが出た」と受け止めて、これまで以上に検査を怠らないことです。「親が糖尿病だから自分もなる」とあきらめる必要はまったくありません。

いまのところ健診の数値に問題がなかったとしても、これからの検査も細かくチェックしておきましょう。

糖尿病以外でも、親や親族に心臓、脳、腎臓の病気がある人がいれば、念入りに検査しておくことです。もちろん、遺伝的な素因がないからといって安心するのも間違い。糖尿病、高血圧、脂質異常症は、不規則な生活や暴飲暴食、運動不足などに起因する生活習慣病だということは忘れないでください。

「今年の結果」よりも、「数値の変動」を見る

健診を受けると、多くの人は「今年の結果がどうだったか」という一点に注目しがちです。数値が基準内なら安心し、少しでも超えると不安になる。しかし本当に注目しなければいけないのは、一度きりの数値ではなく「変動」です。

いまは、その変動をどうとらえるかが医療のトレンドになっています。

体重、ヘモグロビンA1c、血圧、eGFR(腎機能の指標)などは、単に高いか低いかだけではなく、どのように変動しているかを見ることが重要です。なぜなら、変動することにもリスクが隠れているからです。

例えば、体重の変動がもっとも大きかった人は、安定していた人に比べて死亡率が2倍、心筋梗塞や脳卒中のリスクも2倍、さらに糖尿病発症リスクは78%も高まるという報告があります。収縮期血圧(一般には「上の血圧」「最高血圧」といわれる)が不安定な人も死亡リスクが上がり、eGFRの変動が大きい人は腎機能の低下が早いことが我々の研究でもわかっています。

もちろん、基準値を超える数値が悪いのは当然ですが、そこに至るまでの経過を見なければ本当のリスクは判断できません。

例えば80点の成績をとった人がいたとして、それが50点、60点、70点と上がってきての80点なのか、それとも100点をとり続けてきた人の80点なのかで、80点のとらえ方が異なってくるからです。