酒を飲まない新入社員「太りたくない」
年末年始は、酒好きにとって“魔のシーズン”だ。忘年会、新年会、家族との集まり……、気付けば連日飲み続け、恐る恐る体重計に乗っては「また増えてる!」と悲鳴を上げる。
「この時期は仕方ない」と半ばあきらめてはいるが、それでもやっぱり太りたくない。健康面はもちろん、見た目も気になるからだ。こう考えるのは私のような中年世代だけではなく、若者のほうがずっと多い。
以前、新入社員向け飲酒コントロールセミナーにおいて、「なぜお酒を飲まないのか?」という質問をしたところ、「太りたくないから」という答えが大半を占めて驚いた。
未来ある飲み手にそっぽを向かれないためにも、ここでしっかりお酒と肥満の関係についての理解を深めておかねばならない。医学的見地を交えた太りにくい飲み方について、肝臓専門医の浅部伸一さんにお話をうかがった。
アルコール処理が最優先、脂肪燃焼は中断
まず知りたいのは「そもそも、なぜお酒を飲むと太るのか?」ということ。これについて浅部さんは「最大の理由は、肝臓における代謝の優先順位が変わることにある」と話す。これは一体、どういうことなのだろう?
「肝臓は本来、脂肪の分解、糖の代謝、タンパク質の合成など、生命維持に欠かせない仕事を同時にこなしています。しかしアルコールが入ってくると状況は一変。肝臓はアルコールを“毒物”と認識し、最優先で処理しようとするため、それ以外の脂肪燃焼などは一時停止状態に追い込まれてしまうのです」
お酒を飲むと、一番燃焼してほしい脂肪が置いてけぼりになるなんて……。浅部さんはさらにこう続けた。
「アルコールを代謝する途中で“アセチルCoA”という物質が増えます。通常、アセチルCoAは、脂肪燃焼ルートとして知られるTCA回路に入り、エネルギーとして使われています。しかしアルコールを飲むとTCA回路の働きを上回る、アセチルCoAが生産され、結果として余ったアセチルCoAが脂肪として蓄積されてしまうのです」
アルコールによって脂肪の燃焼が止まり、さらに脂肪の材料となるアセチルCoAが増え、行き場を失って脂肪として体に蓄えられる。この踏んだり蹴ったりの状態こそ、お酒を飲むと太ってしまう根本的なメカニズムなのだ。