「飲み会の翌日は食べない」は逆効果

「まず大事なのが、欠食しないこと。飲み会の翌朝、体重計に乗って太ったからと欠食をしがちですが、これは逆効果です。空腹状態で飲むと食欲が暴走し、それによって血糖値の乱高下が起こり、太りやすくなります。また、血中アルコール濃度が急激に上がり、悪酔いも誘発します。飲み会の次の日の朝昼は、最低限の糖質、バナナ、おにぎりなどを食べるようにしましょう」(浅部さん)

葉石かおり、浅部伸一『お酒がいつまでも飲める「100年肝臓」になる秘訣を教えてください! 気持ちよく酔う、太らない、病気にならない』(主婦と生活社)
葉石かおり、浅部伸一『お酒がいつまでも飲める「100年肝臓」になる秘訣を教えてください! 気持ちよく酔う、太らない、病気にならない』(主婦と生活社)

太らないための調整として何も食べないことが、反対に太る原因になるとは……。総摂取カロリーを考慮しつつ、欠食をしないよう心がけよう。

また、「飲み会の合間に水を飲む、あるいは微アルコールやノンアルコールを挟むのもいい」と浅部さん。今はノンアルコールでも味の良いものが増えているので、飲んだ気分を十分味わいつつ、アルコール摂取量を自然に下げられる。

そして「年末年始はなかなか難しいと思いますが……」と前置きしつつ、浅部さんは休肝日についても言及した。

「飲み会が連日続いた後は、休肝日をつくるようにしましょう。肝臓にとって休肝日はごほうび。単にアルコールを抜くだけでなく、肝臓の脂肪合成や炎症反応がリセットされる時間でもあります。連日飲み続けていると、この回復するチャンスが奪われ、太りやすさも助長される可能性もあるので注意が必要です」

健康な肝臓のイメージ画像
写真=iStock.com/SvetaZi
※写真はイメージです

「スマートな飲み方」の極意とは

浅部さんの話を聞いていると、「これだけ飲めば太らない」「これを食べれば帳消し」という魔法のような方法は存在しないことがよく分かる。太るかどうかを決めるのは、結局のところ飲む量・おつまみの選び方・食べ方といった“地味だけれど効く習慣”のようだ。

そして、これは以前取材した二日酔いを回避する方法とも共通する。「太りにくい飲み方=二日酔いにならない飲み方」ということだ。

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アルコールは代謝の優先順位を一気に変え、血糖値を揺さぶり、「シメ欲」を引き出す。その仕組みを理解した上で、酒量をコントロールしつつ、合間に糖質を挟み、休肝日でリセットする。年末年始も出来る限りこうした小さな行動を積み重ね、スマートな酒飲みを目指したい。

浅部 伸一(あさべ・しんいち)
肝臓専門医

東京大学医学部卒業、東大病院・虎の門病院・国立がんセンター等での勤務後アメリカに留学。帰国後は、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科講師・准教授。その後、製薬会社に転じ、新薬開発等に携わっている。実地医療に従事するとともに、肝臓やお酒に関する記事・書籍等の監修・執筆やがんの予防・最新治療についての講演も行っている。医学博士、消化器病専門医、肝臓専門医。著書に『長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい』など。お酒が好きで、日本酒・ワイン・ビールなど幅広く楽しんでいる。アシュラスメディカル株式会社所属。

葉石 かおり(はいし・かおり)
酒ジャーナリスト・エッセイスト

1966年、東京都生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に各メディアで活動中。「飲酒寿命を延ばし、一生健康に酒を飲む」メソッドを説く。2015年、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを柴田屋ホールディングスとともに設立し、国内外で日本酒の伝道師・SAKE EXPERTの育成を行う。現在、京都橘大学(通信)にて心理学を学ぶ大学生でもある。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『名医が教える飲酒の科学』(ともに日経BP)、『日本酒のおいしさのヒミツがよくわかる本』(シンコーミュージック)、『死んでも女性ホルモン減らさない!』(KADOKAWA)など多数。