「かくれ糖尿病」を放置するのは危険
かくれ糖尿病のまま、長い間、血管を傷つけてきたということです。逆にいえば、もっと早く糖尿病に気づけていれば、心筋梗塞や狭心症などを発症することはなかったかもしれないということです。
本書でお話ししたように、糖尿病は10~15年をかけて進行する病気です。しかも、その間はほとんど自覚症状がありません。もし、境界型から血糖コントロールしていれば、さらに心疾患のリスクを抑えられたはずです。
肥満や高血圧を指摘された人は、空腹時血糖やヘモグロビンA1cの数値だけに安心することなく、後に詳しく述べる持続血糖測定(CGM)やOGTTを受けることを検討してもよいでしょう。
かくれ糖尿病に気づけるかどうかが、その後の心臓や脳の健康を大きく左右します。気づかないまま放置すれば、血管のダメージは進み、ある日突然命に関わる病気として襲いかかってくることもあります。
気になる食後の血糖値は、実は自宅でも測ることができます。それが、アメリカの糖尿病学会でも推奨している、持続血糖測定(CGM)です。
日本ではまだインスリンを使っている人など一部にしか保険適用がありませんが、本
当はもっと幅広く使ってよいツールだと考えられています。
“貼るだけの最新機器”で血糖値の変動がわかる
最新のCGMは1円玉ほどの大きさで、上腕にパチっと貼るだけ。約2週間、24時間の血糖変動(正確には、間質グルコース値)を記録できます。スマホとも連動し、夜間の血糖変動まで記録できるため、自分では気づけないリスクも把握できます。
現状では、日本で自費購入できる機器は、最新型と比べると少し大きめ(500円玉くらい)で、価格は6000~7000円程度です。
CGMを使うと、「この食事のあと血糖値が急上昇した」「食後に少し歩いたら上がり方がゆるやかになった」など、自分の血糖値がどう変動しているか客観的にわかるようになります。
また、白米より玄米のほうが血糖値の上がり方がゆるやかだったり、ストレスが強い日は血糖値が乱れやすかったりなど、「なんとなく体にいい」ではなく「たしかに効果がある」と納得できるようになります。
血糖値の変動を手軽に可視化できるのがCGM。糖尿病の患者だけでなく、境界型の人にも、健康に不安を抱える人にとっても大きな武器となるはずです。
(参考文献)
・『糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第9版』/日本糖尿病学会
・April 6, 2017 N Engl J Med 2017;376:1332-1340 DOI: 10.1056/NEJMoa1606148 VOL.376 NO. 14
・米国糖尿病学会2023
・Circulation 76, No. 6, 1224-1231, 1987
・Int J Cardiol. 2019 Oct 15:293:153-158.
・Diabetes Care. 2005 May;28(5):1182-6.
国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。
