北条義時の姉・北条政子とは、どんな人物だったのか。歴史学者の濱田浩一郎さんは「夫である源頼朝の不貞に激怒し不倫相手を殺そうとした激情の人だが、頼朝や息子が相次いで亡くなっても政治の表舞台に立ち続ける胆力をもっていた。『尼将軍』と呼ばれるのもうなずける」という――。
頼朝と政子の結婚で日本史は大きく変わった
今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公は、鎌倉時代前期の武将・北条義時(演者は小栗旬)だが、義時の姉・北条政子にも注目が集まっている。
政子を演じるのは、女優の小池栄子さん。その小池さん演じる政子と、後に夫となる源頼朝(大泉洋)とのコミカルなやり取りや存在感が話題となり、初回放送時には「小池栄子」がツイッターのトレンドに入るほどだった。今後、波瀾万丈の生涯を歩む政子を小池さんがどのように演じていくのか、私はとても楽しみにしている。
北条政子は、北条時政の娘として生まれた。政子は源頼朝と結ばれなければ、伊豆国の小豪族の娘として一生を終えた可能性が高い。また、北条氏も、執権として権勢を振るうことはなかっただろう。そう考えていくと、政子の結婚こそ、北条氏の運命を変えた、いや日本史を変えたといっていい。
妹の見た吉夢を買い取る
鎌倉時代の軍記物『曾我物語』には、時政には娘が3人いたとある。その中の長女が政子で、同書によると美人と評判であったという。
政子には母が違う妹が2人いたが、その次妹がある日、変わった夢をみた。
「高き峰に上り、月日を左右の袂に収め、橘が三つ生る枝をかざす」というものであった。
この不思議な夢のことを、妹は姉(当時、21歳)の政子に話す。
すると政子は「おめでたい夢ですよ。我らの先祖は、今まで、観音菩薩を崇めてきたので、お月日を左右の袂に収めたのでしょう」と語った。橘は招福のシンボルであるし、月と日(太陽)を袂に収めるとは、天下を手中に収めることや、栄華を極めるとの意味合いであろう。
しかし、『曾我物語』に記されている、その後の政子の行動は、現代人から見れば、信じがたいものである。妹の見た夢を買い取ろうとしたのだ。