仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは冨山和彦著『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』(NHK出版新書)――。
ビジネスマン
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イントロダクション

日本は、明治以来の人口増加フェーズから人口減少フェーズに入り、「人手不足」が深刻化している。一方、社会で中心的な役割を担ってきた「ホワイトカラーサラリーマン階級」は、ロボットやAIによって単純作業が代替され、雇用が減る傾向が指摘されている。

これらの大きな変化に、どう対応していけばよいのだろうか。

本書は、ローカル経済圏の人手不足とグローバル経済圏の人余りが同時に起きる社会において、国、組織、個人のそれぞれに変化が必要であるとし、取るべき対策を提言する。

今後、人口減少が続くなかで成長と賃金上昇を実現しようとすれば、付加価値労働生産性を上げるしかない。それを実現するには、エッセンシャルワーカーを革新する必要があり、少ない時間でより高い付加価値を提供する「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」へと格上げすることが重要と説く。

著者は、IGPIグループ会長。日本共創プラットフォーム代表取締役社長。1960年生まれ。2003年、産業再生機構設立時に参画してCOOに就任。解散後、経営共創基盤(IGPI)を設立し代表取締役CEOに就任。20年から現職。パナソニックホールディングス、メルカリで社外取締役を務める。

はじめに シン・学問のすゝめ
序.労働力消滅、ふたたび
1.グローバル企業は劇的に変わらざるを得ない
2.ローカル経済で確実に進む「人手不足クライシス」
3.エッセンシャルワーカーを「アドバンスト」にする
4.悩めるホワイトカラーとその予備軍への処方箋
5.日本再生への20の提言
おわりに 「ややこしさ」に強い「両利きの国」への大転換を急げ

ローカル産業における深刻な人手不足

(*グローバル産業に対して、国内の地域経済圏を支える)ローカル産業における深刻な人手不足の状況は、2010年ごろから顕著になってきたと考えていい。2023年3月、リクルートワークス研究所が「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」という報告書を公表した。そこには、2040年に1100万人の働き手が不足するという衝撃的なデータが掲載された。

一方、三菱総合研究所の試算によると、2035年時点の労働供給市場において、約480万人の雇用減少が起きるという報告が出された。この最大の要因は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)などによる省力化・効率化や、生成AIによって人間が行っていた単純作業が代替されることである。この影響は、ローカル経済で販売やサービスを担う人材に及ぶ。もっともこれは、不足する労働供給を補うものとしてプラスに作用する。

むしろ、深刻な影響を受けるのはグローバル経済におけるホワイトカラーだ。同じ試算で三菱総合研究所は、2035年にホワイトカラー(事務担当)が180万人余剰になるとしているが、実際はすでに始まっている。