冬らしい景色を味わえ、かつアクセスが悪くない城を選出
日本の城は四季折々に違った表情を見せてくれる。だから何度訪れても、あらたな味わいが楽しめて飽きることがない。そんな懐の深さがある。では、冬にはどの城を訪れたらいいだろうか。
これはほかの季節について答えるよりも難しい。なぜなら、美しさだけを優先できないからである。
雪景色が美しい城を選ぶのは難しくない。だが、豪雪地帯を冬場の旅先に選ぶのが、はたして現実的だろうか。交通手段の確保が難しい場合もあるし、現地にたどり着けたとしても、積雪のために歩くのが困難なようでは、城めぐりどころではない。
そう考えると、冬に訪れるべき城は、冬ならではの美しさが楽しめたり、冬にこそ美しさが際立ったりし、可能であれば、雪などの冬らしい景色を適度に味わうことができる城。豪雪地帯は避けつつも、雪が降る地域の場合は駅からのアクセスが悪くない城。そんなところになるだろうか。こうした視点で8つの城を選んでみた。
駅からタクシーで5分の東北の名城
第8位は白石城(宮城県白石市)。宮城県最南端、西を蔵王連峰、東を阿武隈山系に囲まれた盆地の小高い丘上にある。仙台城(仙台市青葉区)の支城で、元和元年(1615)の一国一城令でも廃城にならず、伊達家の家臣、片倉家の居城として明治維新まで存続した。
明治になって建造物ばかりか石垣の石材までが転売されてしまったが、事実上の天守だった大櫓と本丸の大手門が、平成7年(1995)3月に木造の伝統工法で復元されている。
調和がとれたプロポーションの大櫓は、名称こそ「大櫓」だが、伊達家の分家の居城である宇和島城(愛媛県宇和島市)の天守よりも大きく、土佐藩24万2000石の高知城(高知県高知市)の天守に匹敵する。3階には廻縁がつき、窓が釣鐘型の華灯窓であるなど、古風な装飾が施されているのも魅力的だ。また、比較的単純な造形ながら、眺める角度によって表情が大きく変わる。
白石城周辺は雪が降るものの、それほど積もらない。また、東北新幹線の白石蔵王駅からタクシーで5分(東北本線白石駅から徒歩15分)ほどなので、訪れやすい。適度な雪景色を楽しむのにもってこいだといえる。