冬は国宝の城との相性◎

第7位は姫路城(兵庫県姫路市)。いわずと知れた国宝であり、ユネスコの世界文化遺産である。この城を訪れるのに季節は問われないが、姫路城ならではの白亜の建造物群は、冬の澄んだ空気の下で、いっそう冴えて見える。

兵庫県姫路市姫路城
写真=iStock.com/ziggy_mars
※写真はイメージです

しかも、姫路城には白い櫓や門、塀が複雑に折り重なるように残っている。姫路城は慶長5年(1600)の関ケ原合戦後に、52万石で入封した池田輝政が築いたが、いまも多くの建造物が残る城の中核部分は、羽柴秀吉が城を築いた当時の、ひな壇状に並んだ小さな曲輪を踏襲している。つまり古い構造を利用しているため、通路は迷路のようになり、建造物も複雑に交錯し、独特の景観をつくり出している。

この白い複雑な建造物群がもっとも冴えて見えるのが、冬であるのはまちがいない。

第6位にも国宝の天守を挙げる。松江城(島根県松江市)である。現存する12の天守のなかでは床面積が姫路城に次いで大きく、高さは姫路城、松本城に次ぐ3番目。壁面に下見板が張られ、軒裏なども白漆喰を塗らずに白木のままの、古武士のような風貌である。堀や石垣のほか、城下町もよく残る。

松江市は日本海側気候に属するので、雪が降る日は太平洋側よりも多いが、さほど積もることはない。標高29メートルの亀田山の最高所に築かれた天守は、うっすらと雪化粧をすると、復元された二の丸の櫓や塀越しに臨む姿が、壁面の黒色と白との対比が強調されて幻想的に美しい。

また、雪がなくても丘の下から望む天守は、木々の葉に隠れることなく、冬ならではの凛とした姿をのぞかせる。

木々が枯れたことでよく見えるのは…

第5位も天守が現存する12城のひとつ、丸亀城(香川県丸亀市)を挙げる。ただし、選んだ理由は天守よりむしろ石垣を観たいからである。

丸亀城 水堀、石垣と天守(日本国指定の重要文化財)
丸亀城 水堀、石垣と天守(日本国指定の重要文化財)(写真=Reggaeman/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

この城は慶長20年(1615)の大坂夏の陣後に出された一国一城令で、いったん廃城になったが、寛永20年(1643)から山崎家治が、いわば幕命によって築き直した。瀬戸内海の交通を監視するという任務を課せられたのである。

往時は三重櫓と呼ばれた天守こそ小さいが、標高66メートルの亀山は、山麓から3段、4段と重ねた石垣で取り囲まれており、5万3000石の大名の城には到底見えない。木が繁っていると、ところどころ隠されてしまうこの壮大な石垣が、木の葉が落ちた冬場にはよく見える。頂上に建つのが小さな天守であるだけに、石垣の途方もないスケールがなおさら強調される。