腰痛には、絶対に放置していけないタイプがある。横浜市立大学附属市民医療センターペインクリニック内科の北原雅樹医師は「眠れないほど腰や背中が痛む、やたらつまずく、急に体重が減る。これらの症状があったら今すぐ病院に行ってほしい」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
「たかが腰痛」その油断が命取りになる
腰痛に悩まされている日本人は2800万人に上ると推定されています。これは4人に1人が何らかの腰痛の症状を持っていることになります。腰痛人口は他の病気やケガよりも多く、まさに国民的な症状だと言えます。
最新の厚生労働省『国民生活基礎調査』(2019年版)によると、病気やけがの自覚症状を持つ人のうち、腰痛を訴える人が男性は1位、女性は肩こりに次いで2位となりました。一方の通院率は男性では6位、女性では5位という結果になりました。このデータからも、日本人の多くが腰痛に悩まされている実態が分かります。
腰痛と言えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが知られています。ところが、そのようなケースは実は少ないのです。原因が特定できる「特異的腰痛」は15%。残りの85%は「非特異的腰痛」と呼ばれる原因不明の腰痛です。医師にも原因が分からないのです。
本稿は、意外と知られていない腰痛を取り上げます。最初は「絶対に放置してはいけない腰痛」がテーマです。腰痛の原因は腰ではなく、実はがんや大動脈瘤などの命に関わる病気がかくれている恐れがあります。
「急性の腰痛」と「慢性の腰痛」
腰痛は、2種類あることをご存じでしょうか。眠れないほどの痛みがある「急性の腰痛」と、長引く「慢性の腰痛」です。
絶対に放置してはいけない腰痛は「急性の腰痛」です。大きく2つあります。1つはがんや大動脈瘤などの原因がある「二次性の腰痛」。これは命の危険も伴いますから、痛みが強かったら、直ちに医者に行き精査・治療をしてください。