※本稿は、ジェイソン・ファン著、多賀谷正子訳『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
毎日4時間運動してもやせない理由
ピーター・アッティア医師は〈ニュートリション・サイエンス・イニシアティブ〉の共同設立者だ。この組織は、栄養や肥満の研究における科学的分析の質を向上させることを目的として設立された。数年前まで、彼は長距離を得意とする水泳選手で、ロサンゼルスからサンタカタリナ島まで、およそ40キロ泳ぎきった十数人のうちのひとりだった。
彼は、運動選手にとってはごく一般的な高炭水化物の食事を摂り、毎日3、4時間の練習を丹念に行っていた。それなのに、当時の彼は自分が最適だと思う体重を18キロオーバーし、BMIは29で体脂肪率は25%だったという。
だが、運動をしていれば体重が減るはずではないのか?
カロリーのバランスがとれていないこと――摂取カロリーの増加と消費カロリーの減少――が肥満になる原因だとされている。だから、私たちは、体重を減らすには運動が最も大切だと信じてきた。運動量を増やせば、摂り過ぎたカロリーを燃やせるはずだ、と。
「運動人口が増えても、太った人は減らない」統計データ
たしかに、運動するのは健康にいい。「医学の祖」といわれた古代ギリシャの医者、ヒポクラテスもこんなことを言っている。
「少な過ぎず多過ぎず、適度に栄養を摂り運動をすれば、私たちは間違いなく健康になれるだろう」
1950年代になると、心臓病への懸念が広がり始めたこともあって、身体活動や運動についての関心が高まり始めた。1955年には、アイゼンハワー大統領が〈青年の体力に関する大統領諮問委員会〉を設置。1966年には、アメリカ公衆衛生局が、「減量には運動量を増やすのが最も効果的」と提唱し始め、エアロビクスのスタジオが雨後の筍のように次々と開設されていった。
1977年にはジェイムズ・フィックスの『奇蹟のランニング』(クイックフォックス社)が大ベストセラーとなった。私が高校生だった1980年代の必読書といえば、ケネス・クーパー医師の『The New Aerobics(新しいエアロビクス)』だ。この頃、余暇に運動を取り入れる人が、どんどん増えていった。