※本稿は、ジェイソン・ファン著、多賀谷正子訳『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
体重と摂取カロリーの相関関係
私たちの体重が増えるのはなぜだろう? 現世に定着した“最も一般的な答え”は、「カロリーの過剰摂取」だろう。
1971年から2000年にかけてのアメリカにおける肥満率の増加は、一日の摂取カロリーがおよそ200〜300キロカロリー増加したことと関係していると見られた(※1)が、ここで注意しなければならないのは、「相関関係は因果関係ではない」ということだ。
さらにいえば、体重の増加と摂取カロリーの増加の相関関係は、最近では見られなくなっている(※2)。
実際に、1990年から2010年にかけて行われた米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータでは、「摂取カロリー増加と体重の増加に相関関係はない」との結果が示された。肥満は一年ごとに0.37%増えたが、摂取カロリーはほぼ一定だったのだ。
女性のカロリー摂取量の平均は1761キロカロリーから1781キロカロリーへ若干の増加が見られたが、男性の場合はむしろ2616キロカロリーから2511キロカロリーへと減少している。
イギリスでも「因果関係なし」との結果に
英国における肥満の広がりは、北米とほぼ同じ様相を呈している。もう一度述べるが、体重の増加と摂取カロリーの増加に関連性があるというのは、正しくない(※3)。
英国の場合、摂取カロリーの増加も、食品から摂る脂質の増加も、肥満とは関係がなかった――因果関係はないということだ。
実際、肥満率は上昇しているのに対し、摂取カロリーは減少していた。よって、そのほかの要因が変化したものと考えられる。だが、私たちは、自分の体はカロリーと体重を量る天秤のようなもので、カロリーのバランスが崩れると、時間とともにそれが脂肪の蓄積となって現れると思っている。
熱力学の第1法則(エネルギー保存の法則)では、「エネルギーの獲得と喪失は独立して起こりえない」とされているので、もし、消費カロリーが常に一定なら、摂取カロリーを減らせば体重の減少につながるはずだ。
肥満研究の第一人者ジュール・ヒルス博士は、2012年の「ニューヨーク・タイムズ」紙に寄稿した記事のなかでこう説明した(※4)。
「物理学的に考えれば、体内に摂り入れるカロリーと出て行くカロリーが同じなら、体脂肪は変わらない、という法則が成り立つ。食べ物が体を動かす燃料として使われるときに、カロリーが消費される。
だから、体脂肪を減らすには――肥満を解消するには――摂取するカロリーを減らさなければならない、もしくは運動量を増やして消費カロリーを増やさなければならない、あるいはその両方をやらなければならない。
摂取するカロリーがかぼちゃであろうと、ピーナッツであろうと、フォアグラのパテであろうと、それは変わらない」