頭痛には、市販の鎮痛薬を飲んでいいものと飲んではいけないものがある。横浜市立大学附属市民医療センターペインクリニック内科の北原雅樹医師は「緊張型頭痛(ストレス頭痛)は日本人に最も多いタイプで、約5人に1人が悩んでいる。しかしこの頭痛には市販薬は効かない」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
緊張型頭痛は「筋肉のコリ」で起きる
前回は薬が劇的に効く片頭痛をご紹介しました。今回は対照的に薬が効きにくい緊張型頭痛です。
日常的な姿勢の悪さや不安・緊張、長時間のデスクワークなどの心身のストレスによって首筋や頭蓋骨を覆っている筋肉のコリが原因で、ストレス頭痛といってもいいでしょう。私は「頭コリ、肩コリ、腰コリ、膝コリ、下肢コリ」という五大コリの1つと呼んでいます。
疫学調査では、緊張型頭痛の過去1年有病率は15歳以上の人口の22.3%(男性18.1%、女性26.4%)に上り、片頭痛の8.4%を大きく上回りました。日本人に最も多い頭痛で、約5人に1人はこの頭痛に悩まされていることになります(日本頭痛学会)。
また様々な集団調査では、生涯有病率が30~78%の範囲で示されており、多くの人が人生で一度はかかるきわめて一般的な頭痛と言えるでしょう(『国際頭痛分類第3版』)。
前回もご紹介した図表1の通り、筋肉のコリばかりではなく、血管性の要素、心理社会的要素もある程度あるため、一部の症状は片頭痛の症状と似ているところがありますが、ADL(日常生活の活動度)への影響がほとんどありません。ここが運動を控えたほうがいい片頭痛とは大きく異なります。
緊張型頭痛には「コリをほぐす」のが一番有効です。少し我慢すれば生活していけるからといって、我慢したまま生活習慣を改めず、もしくは誤った治療を受けて続けると、QOL(生活の質)とADLを下げ、寝たきりのリスクを高め、健康寿命を損ねます。
寝たきりのリスクについては、私と筆者の鼎談が収録された『道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』(アスコム)をご参照ください。