健康で長生きするためには筋力を保つことが欠かせない。医師で、順天堂大学大学院医学研究科特任教授の齋田良知さんは「コロナ対策や暑さで巣ごもりをしてると運動不足で下半身の筋肉は一気に衰える。健康寿命を延ばすには、太ももとふくらはぎのトレーニングを意識してほしい」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)(後編/全2回)
スポーティな女性フィットネストレーナー
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平均寿命と健康寿命の間を埋める「貯筋習慣」

厚労省の集計によると、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳、いずれも過去最高を更新しました。一方の健康寿命は、最新の2016年データでは男性72.14歳、女性74.79歳でした。

健康寿命とは、WHOが提唱した新しい指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間です。平均寿命と健康寿命の差(男性は9.5年、女性は12.95年)を埋めるように、健康寿命を延ばすことが人生の幸せには欠かせません。

そのために必要なのは適度な運動です。

運動で筋肉を貯える、いわゆる「貯筋」を習慣にする必要があります。

毎日コツコツと貯筋すると、日常生活やスポーツでの体の動きが良くなり、基礎代謝がアップし太りにくい体質になります。骨や内臓を衝撃から守ることにもつながります。元気に生活が送れてスポーツを楽しめ、脳の神経伝達物質を活性化させ、仕事の効率もアップ。認知機能低下予防にも役立つといった多くの恩恵が得られます。筋肉はあなたを裏切りません。

前回記事で紹介した、貯筋習慣で特に大切な3つのFの筋肉(腹筋、太もも、ふくらはぎ)の中で、腹筋とともに衰えのスピードが速い筋肉が、太ももです。

腹筋と太ももの筋肉は「座る」「立つ」といった日常生活の中で最も重要な役割を担っています。太ももの筋肉量は20歳のときに平均1.8kgありますが、緩やかに減少し、50歳以降は年1%の割合で減っていきます。階段の上り下りがきつい人、よくつまずく人は、太ももの筋肉が衰えている証拠です。

今回は、健康寿命を延ばすのに欠かせない3つのFの筋肉のうち、太ももとふくらはぎを鍛える方法について紹介したいと思います。