国民的アニメ「ちびまる子ちゃん」をベースにしたサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のCMに賛否両論が巻き起こっている。桜美林大学准教授の西山守さんは「静岡の庶民だったまる子がNYでビールを飲むという設定には、サントリーの深い狙いがある」という――。
「ザ・プレミアム・モルツ」 新CMより
画像=プレスリリースより

「プレモル子ちゃん」CMに視聴者が抱く違和感

サントリーが2月9日から開始した「ザ・プレミアム・モルツ」(以後プレモル)の新CMシリーズ「プレモル子ちゃん」が注目を集めている。国民的アニメ「ちびまる子ちゃん」の20年後を実写で描くこのCMは、大人になったまる子が幼馴染のたまちゃんとニューヨークで再会するというストーリーなのだが、配役や世界観をめぐって、SNSで話題になっている。

主人公のまる子は広瀬すずさん、幼馴染のたまちゃんは伊藤沙莉さん、そして同級生の花輪クンはオダギリジョーさんがそれぞれ務めている。

SNSで最もよく聞かれる声が、静岡の庶民の暮らしを描く「ちびまる子ちゃん」と、ニューヨークの優雅な風景がマッチしていないという声だ。

「プレモル」が日々直面する課題

サントリーは、ビール事業では後発組で、アサヒとキリンの二強と、サッポロという三番手に阻まれて、なかなか成功することができなかった。指名買いが多いビールでは、安定的な市場を確保することは難事業で、スタンダードビールでは依然として成功しているとは言い難い。

そうした中で、プレミアムビールとして成功を収めたのが「ザ・プレミアム・モルツ」だ。

発売初期のプレモルは「モンドセレクション最高金賞受賞」をアピールしていた。「プレミアム」の裏付けとして、ヨーロッパの賞を受賞していることをウリにしていたのだ。

もっとも、最近はモンドセレクションもインフレ状態で、“箔づけ効果”は薄れてきたようだ。

売り上げは右肩上がりである一方で、プレミアムビールならではの「プレミアム感をどう維持していくのか」という課題に日々直面しているのが、プレモルという銘柄なのだ。

ここに、CMの舞台を、作者のさくらももこさんの出身地である、静岡県清水市(現静岡市)からわざわざニューヨークに移した理由がある。