私自身、アメリカ留学中にこのことに気が付き、何がトリガーかを見つけ、生活習慣を改め、緊張型頭痛を克服しました。運動と生活習慣の改善で減量すると、「なんて健全な生活になったのだろう、昔はなんて不健全であったのだろう」と実感できます。「頭痛フリー」になった時の快調さ、快適さ、爽快さは素晴らしいものがあります。

すべての慢性の頭痛に悩む患者さんにも、このさわやかな実感を味わっていただかないともったいないと思います。今では年1回ほど、シャツのボタンを1番上まで止めて、ネクタイで首をシャキッと締め、スーツ姿で緊張して講演をした後に、一時的に緊張型頭痛が出るくらいです。

慢性痛による経済損出は7兆円

私は慢性の頭痛の患者さんの6、7割くらいが生活習慣を見直さず、100%フルの状態が発揮できてなくても、痛みに耐えながら日々だましだまし仕事や家事、生活を続けていると感じています。これは実は大きな社会的問題でもあります。

休暇を取っているわけではなく、出勤しているのに業務効率が悪くなることによる経済損失を「プレゼンティズム」と呼びます。ある試算では、慢性の痛み全体のプレゼンティズムによる経済損失額は7兆円にも上ります。なかでも慢性の頭痛はもっともプレゼンティズムが高い病気と言われており、知らぬ間に莫大な経済損失を招いているのです。

後から振り返って失った時間、莫大な労働生産性は取り返しがつきません。そもそも緊張型頭痛には薬は効きませんので、頭痛に対する戦略を根底から覆さないとならないでしょう。その意味では、自己判断はせずに、まずはかかりつけの主治医を見つけ、定期的に受診することをお勧めします。市販薬ですませ、医者を受診しない、すなわち頭痛を甘く見ることは第一選択肢ではありません。

(詳しく知りたい方はこちら)
◎慢性痛に関するYouTubeチャンネル「慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾
第53回:頭痛総論
第55回:緊張性頭痛
◎慢性痛についての総合的情報サイト「&慢性痛 知っておきたい慢性痛のホント」

(注1)本稿での解説は、世界最高峰の痛みの研究組織、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターでの5年間の留学時代に習得し、日本帰国後に臨床に応用し多くの症例を積み重ねたうえで多少改変した、痛みの専門医として有効性が高いと感じる個人的見解、私論であります。意見には個人差がありますので、あくまでも主治医の先生と相談のうえ、どの治療を選択するかは自己責任としてくださいますよう、お願い申し上げます。

(注2)私の在籍する横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科では、現在、神奈川県内の患者さんのみ受け付けています。全国各地からのお問い合わせは「慢性の痛み政策ホームページ」の全国の集学的痛みセンターの一覧をご参照ください。

(注3)厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」の無料電話相談窓口はこちらです。

(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
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