勧められた保険に加入したまま、毎月保険料を支払い続け、ほったらかしにする人は少なくない。ファイナンシャルプランナーの藤原未来さんは、「毎年、自分や家族に必要な保障額をしっかりチェックして、契約をそれに見合ったものに更新するべき。保険の販売代理店の言われるままにするのもよくありません」という――。
救命浮輪
写真=iStock.com/Sezeryadigar
※写真はイメージです

金融の素人が知っておくべき資産運用を学ぶシリーズ「保険編1」

私事で恐縮ですが、最近、白内障の手術を受けました。術後に、だいぶ前に加入した掛け捨ての生命保険のことを思い出し、請求してみたところ1週間も経たないうちに手術代と入院費用が振り込まれました。一瞬「大変な思いをしたけれども、経済的な打撃がなくて助かった!」と思ったのですが、考えてみれば、ほとんど保険請求をしたことがないので、長年、払い込んでいる保険料の総額を計算すると複雑な気持ちになりました(払い込んだ総額のほうが断然多かった)。

保険って結局損するものなのか、どうなのか。モヤモヤしてしまう原因は、そもそも保険の種類がありすぎて、私には理解不能であることです。そこで、ファイナンシャルプランナーの藤原未来さんに根掘り葉掘り聞くことにしました。

——保険って「年齢に応じて見直しすべき」と聞きますが、素人の私には難しすぎて、何をどうしてよいかわかりません。

【藤原未来(ファイナンシャルプランナー、以下FP)】では、まず保険の基本的な考え方から説明しましょう。

保険というのは「たくさんの人がお金を出し合い、もしものとき(病気、失業、死亡など)に補い合う」ことを言います。この出し合っているお金を「保険料」と呼びます。保険には、健康保険や失業保険、年金というような公的社会保険と、民間で運営されている民間保険があります。

——会社員でいえば、給料から強制的に天引きされるのが公的な社会保険で、自分の意思で加入するのが民間保険ってことですか?

【藤原FP】そうですね。この民間保険の中には損害保険と生命保険というものがあります。

損害保険は、自動車事故や住宅火災のような万が一の“事故”に備えるもの、一方の生命保険は病気やケガなど“人”に対するリスクに備えるもので、その延長線上に被保険者、つまり保険に入っている人が亡くなったときに家族が困らないようにする死亡保険があります。

付随して、お子さんの教育資金などに備えての学資保険や、自分自身の年金にするための個人年金保険などもあり、さらに「生きるための保険」としてがん保険、介護保険、給与保障保険などもあり、世の中のさまざまなリスクに備えられるようになっているんですね。

——種類が多いのと、名称の意味がいまひとつ分からないこともあって複雑に感じてしまいます。例えば、しばしば耳にする「養老保険」っていう名称。私の頭には某居酒屋チェーンが出てきてしまうのですが、これは何ですか?

【藤原FP】あの居酒屋さん、おいしいですもんね(笑)。養老保険というのは、別名「生死混合保険」とも呼ばれていますが、死亡保障も付けておくけれども、同時に貯蓄もしておきたいという人向けの商品なんです。

保険期間内で亡くなった場合は「死亡保険金」が出ますし、保険期間が終了した時に、亡くなっていなければ「死亡保険金」と同額の「満期保険金」を受け取れるという保険です。

——それいいですね? 旦那さんが加入していたら、どっちに転んでも、奥さんは助かるかもしれませんね。デメリットはあるんですか?

【藤原FP】生命保険の保険料は「純保険料」という保障や運用に回す部分と、保険事業の運営に回す「付加保険料」に分かれます。養老保険の「純保険料」は死亡保険金用の「危険(死亡)保険料」と満期保険金用の「貯蓄(生存)保険料」が含まれています。これらの保険料を合算して算出するので、支払う保険料の負担が大きくなり、受け取る満期保険金が払い込んだ保険料の合計額を下回る場合もありますね。