「後戻り」をさせないルールづくり
いったん決定が下されたら、それを批判したり覆そうとしたりしてはならないという「後戻りなし(no hands from the grave)」ルールを設けることが役に立つ。このようなルールがない場合には、混乱や対立が起きやすい。
われわれはかつて、ヨーロッパのアパレル企業9社で構成されるパリの大手国際企業と仕事をしたことがある。これら9社はいずれも独立した事業体だったため、市場でたびたび競合した。9社の社長で構成される執行委員会の会長は、会長になって間もないころたびたび遭遇した混乱に対処するため、「後戻りなし」ルールを導入した。
それぞれの会社がどのスタイルを提供するかについて執行委員会で合意が成立したものと思っていたのに、後になって1社の社長から、別の会社が合意に違反しているという半狂乱の電話を受けることがよくあったのだ。違反した社長は決まって、「合意に従っていたら自分の会社の利益が落ち込んでしまう」と文句を言うのだった。
そこで彼は、執行委員会のメンバーを説得して、決まったことは決まったことという原則に従うことに同意させたのである。それ以後、社長たちは、揺るぎない合意が成立して議事録に記録されるまで散会しないようになった。後から批判したり過去に遡って変更したりすることもなくなった。
合意は単なるお題目ではなく、効果的に業務を遂行するチームの欠かせない要素である。戦略・執行目標、役割と責任範囲、意思決定要領という3つの主要分野で合意を達成することにより、メンバーの能力とエネルギーを縄張り争いやごまかしにではなく、会社の目標を推進することに注ぎ込むチームを築くことができるのだ。
(翻訳=ディプロマット)