アメリカではベビーブーマー、日本では団塊の世代の「大量定年」が企業の危機感を煽っている。リーダー候補生たちを一夜にして「司令塔」に育てるのは無理だが、育成過程を加速することは可能だ。

人口動態の大変化が間近に迫っており、それは多くの企業にとってリーダーシップの危機を意味している。高い能力を身につけ、高い地位にいるベビーブーマー(第2次大戦後に出生率が高まった時代に生まれた世代。日本の「団塊の世代」と一部重なる)が一気に退職し始めたら、残されるのはリーダー層の深刻な不足である。イリノイ州に本社を置く人材コンサルティング会社、RHRインターナショナルのウッド・デイルによれば、アメリカの企業幹部の少なくとも50%が向こう5年のうちに定年に達するという。日本やオーストラリア、それにヨーロッパの一部の国は、さらに大きな打撃を受けるだろうと、『Workforce Crisis: How to Beat the Coming Shortage of Skills and Talent』(2006)の共著者、タマラ・エリクソンは言う。

次世代のマネジャーの供給が十分であれば、大量退職でも問題は生じない。しかし、ほとんどの企業で、次世代のマネジャーは圧倒的に不足している。

「ベビーブーム世代はきわめて人数が多いので、この世代の人々は今日、企業の上級リーダー職の大半を占めているだけでなく、その下のポジションの多くも占めている」と、研究教育グループ、コンコース・インスティテュート(マサチューセッツ州)の所長を務めているエリクソンは言う。おまけに、先進工業国における出生率の低下は、後継世代の人数がベビーブーム世代よりはるかに少ないことを意味している。

では、企業は何をすればよいのか。「リーダーの育成を加速しよう。それも早急に」と、エリクソンは言う。

本稿では、効果的かつ効率的にリーダーを育てる方法について、専門家たちの5つのアドバイスを紹介する。