おなじチームでも労働環境が変わるだけで創造性が開花したり枯渇したりすることがさまざまな調査で明らかになっている。チームの創造的思考能力を高めるためにリーダーは何をすべきか。

新しいアイデアが生まれ、考案され、価値を付加するイノベーションへと育てられる労働環境を築くために、リーダーには何ができるのか。

何よりもまず、イノベーションは製品やサービスに限定されたものではないことを肝に銘じよう。戦略論の権威でロンドン大学経営大学院教授のゲーリー・ハメルが、先般の「フォーチュン・イノベーション・フォーラム」の基調講演で指摘したように、新しい製品やサービスの創造は、組織がその業績を高める方法をイノベートするための一手段にすぎない。長年の製造上の問題を解決する新しい方法も、スピードを速め、コストを削減する新しい業務プロセスも、研究開発やマーケティングや人材管理の新しい手法も、すべてが企業の利益に大きな価値を付加できるイノベーションなのだ。

無数の方法で価値を付加できる類の創造的思考をチームに促すためには、リーダーは次の4つの分野に精力を傾けるべきだと、専門家たちは言う。

(1)明確な目標を設定し、そこに到達する方法はメンバー自身に決めさせる

人間の創造性は仕事に対する興味と仕事が与えてくれる刺激によって大きく高められる。

織り地やコーティング地のメーカー、シーマン・コーポレーション(オハイオ州)が2005年初めに突然、赤字に転落したとき、同社のCEOリチャード・シーマンは、経営管理チームを集めて会社を黒字に戻す方法を見つけるよう求めた。シーマン社を赤字に追いやった大きな要因は2つあった。石油化学製品の価格の上昇と売り上げの鈍化である。シーマンは経営管理チームに、会社を黒字転換させるために必要な変革を企画実行する権限を与えた。

この大胆な一任作戦は成功した。チームは3カ月足らずで会社を黒字に戻したのである。チームは迅速に値上げを実現することと生産能力を削減することに精力を集中することで、これを達成した。シーマンは次のように語る。

「創造的な部分は、わが社の顧客企業に値上げの必要性を伝えたこと、そしてさらに、それらの企業がそれぞれの顧客にこの値上げの必要性を伝えるために役立つ情報を効果的に提供することだった」