なぜかわからないけれど「どことなくいやな感じ」がしたり、「なんとなくいい」と思ったりすることはビジネス上でもよくある話。これは「パターン認識」のなせる業だ。その正しい使い方とは?

「なんとなく」何かを決めてしまう理由

危機的状況にあるか何かで、関連事実の収集・分析ができないうちに決定を下したという経験はないだろうか。「何もかも理にかなっているように思われるのに、どうも気に入らない」と思った経験はないだろうか。あるアイデアがとても魅力的に見えたので、十分なデータがないにもかかわらず、そのアイデアを推し進めたという経験はないだろうか。もしあなたにそうした経験があるとしたら、決定を下すうえで直感がなんらかの役割を果たしてきた、ということになる。

直感、第六感、内なる声といったものは、事実の系統だった分析の助けを借りずに状況を読み取り、判断を形づくる心的プロセスである。直感は何よりも「パターン認識」の問題であり、頭の中に多くのビジネス・データが蓄積されていればいるほど、直感が過去の経験と現在の経験の有意なつながりを認識する可能性は高くなる。

マサチューセッツ州のソフトウエア会社、チャールズ・リバー・ディベロップメント(CRD)の創立者で社長のピータ・ランベルタスは、これを次のように表現する。「ビジネスの直感は、現場に出ることで磨かれる。クライアントと付き合ったり、販売の現場に関わったり、市場と絶えず接触することで勘が働くようになる」。

直感のプラス面は、「何かがおかしい」という有益な警告を発してくれるという点だ。マルコム・グラッドウェルのベストセラー『第1感──「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』(2006)は、ある彫像の興味深い話で始まっている。その彫像を本物と証明する多くの資料が存在していたにもかかわらず、それが偽物であることに芸術のプロたちが即座に気づいたのだ。

直感にはマイナス面もある。直感の力を過信してしまったら、ビジネス上のあらゆる重要な決定に必要な「客観的分析」を省略してしまおうという誘惑にかられるおそれがある。

もう1つの危険性は、「認知バイアス」によって決定が歪められるおそれがあることだ。たとえば、現在の状況は実際には過去の状況とは大きく異なるにもかかわらず、両者の間に有意な類似性を見出す間違った類比のために、決定を誤ることがある。