複数の国や時間帯や文化をまたぐチームを率いるマネジャーの悩みは深い。なぜなら失敗したときに失うものが、より大きいからだ。どうすれば個々人の才能、気質、利害を1つにまとめて成果を出せるのか。
国境を超えたチームが効果的に機能できない場合には、会社のブランドイメージ、拡大計画、顧客基盤、サプライチェーン、販売ネットワークのすべてが痛手を負うことがある。
グローバルに事業を展開しているフォーチュン1000企業の無数のチームに対してコンサルティング業務を行うなかで、われわれは、文化的・地理的制約を超越した成果をあげるチームを築くためには、次の3つの分野で共通理解を達成することがきわめて大切だという認識に至った。
・戦略・執行目標
・役割と責任範囲
・意思決定要領
本稿では、さまざまな産業のさまざまな企業のグローバルチームが、価値を高めるためにどのようにして合意を達成し、その潜在的な力をフルに発揮してきたかをお伝えする。
(1)戦略・執行目標について合意する
数年前、わが社のクライアントだった世界的な消費財メーカーで、こうした認識の相違が重大な事態をもたらしたことがある。この会社の北米の幹部チームとヨーロッパの幹部チームが、世界全体の戦略を決めるために会議を開いた。北米チームは提案されたばかりの新しい戦略を支持した。ヨーロッパチームは合意しているように見えたが、じつはそうではなかった。
会議が終わって両チームのメンバーが各自の事業所に戻ったとき、北米チームが持ち帰った戦略の前提とヨーロッパチームが持ち帰ったそれとはまったく別個のものだった。当然ながら、作成された製品開発計画や販売計画は大きく異なっていた。「合意のように見えるもの」は合意と同じではない。この会社はこのことを苦い経験を通じて学んだ。わずか18カ月足らずのうちに、この会社の新製品パイプラインは空っぽになり、製品化までにかかる時間は業界の標準より30%も遅くなっていたのである。