一方的に話を聞かされるのが好きだという人はまずいないだろう。「話のうまさ」がかえって聞き手を退屈させていることもある。1人対多数の場面で聞き手を引き込むには「対話」の要素が不可欠だ。

先日、あるプライベート・エクイティ・ファームのパートナーが、契約をとろうとして売り込みにくる監査人や監査事務所の苛立たしいプレゼンテーションの仕方について嘆いていた。最初にプレゼンテーションを行った監査人は、すでに知っていることや無意味な情報を長々と話しただけだった。2番目に登場した監査事務所は、娯楽性の高いスライドやビデオを持参していたが、内容はわざとらしく嘘っぽく感じられた。それはもちろん監査人に求められる資質ではなかった。

では、最終的に契約することになった監査事務所のプレゼンテーションは、どこが特別だったのだろう。このパートナーによると、この事務所の監査人たちの話は「たまたま出会った」誠実で有能なプロフェッショナルと語り合っているかのように感じられたという。彼らはプレゼンテーションは行わず、それよりも訪問先企業のビジネス上の諸問題と彼らが提供できるサポートについて対話することに力を入れたと、このパートナーは語った。

このような「対話」は決して偶然の産物ではない。この監査事務所代表者たちは、ライバルたちと違って、独自の会話スタイルで情報を提示し、聞き手の最も重要なニーズについて聞き手自身に語らせた。そうすることで、プレゼンテーションの照準をそれらの問題に合わせることができたのである。