直感をうまく利用するコツは、どのような場合に直感を信用するべきかを知ることにある。本稿では、直感が決定の助けになりうる2つの状況を紹介しよう。

その1──「嗅覚テスト」として利用する

事実に基づく分析が本当に正しいかどうかを調べる手段として直感を利用しよう。客観的分析では「進め」と出ていても、直感が待ったをかける場合には、決定を保留するべきだと、ボストンのマーケティング・リサーチ会社、ウォレス・アンド・ウォッシュバーンの社長、キム・ウォレスはアドバイスする。

「論理的に納得でき、感覚的にもこれでよいと思えるようになるまで決定を先送りしよう。脳の両側、つまり論理の側と直感の側が一致しないときは、論理的観点からも直感の面からも同じ決定になるまで、別の情報源や別の人たちから情報やアドバイスを得よう」

一例として、ウォレスは自分の会社で始めようとしていた新しい電子メールによるリサーチ・サービスのブランド名とロゴを直感で決めたときの経験を挙げる。そもそもウォレスは「人の心をとらえる名前とロゴでなければ、人々はわが社の電子メールを開いてアンケートに答えてはくれないのではないか」と思っていた。社内で候補に挙がっていた名前はいずれも知的観点からは理にかなっていたし、採用されていたらうまくいっていたかもしれなかったが、ウォレスにとってはどれも皆、何か、具体的にこれと特定できない何かが欠けていた。そのため彼は決定を先送りした。

その後のある晩、彼は映画『グラディエーター』を観にいった。映画の中でシーザーと群集が(闘技の敗者を殺すことに賛成か反対かを示す身振りとして)親指を立てたり(サムズアップ)、下げたりする場面で、突然ひらめいた。「『これだ!』とね」。

その後行われた「サムズアップ・リサーチ」という名前とそのロゴの市場テストは、ウォレスの直感が正しかったことを裏づけた。他の名前やロゴだった場合に比べて最高で5倍も高い回答率を引き出したのである。

論理と直感が一致しないとき、その背後には何があるのだろう。『意思決定アプローチ―「分析と決断」』(1999)の共著者で意思決定の専門家、ジョン・S・ハモンドは、客観的分析と直感の対立は、分析で何か重要な点が見落とされていることを示唆していることがあるとしている。そのような場合は、もう1度証拠を見直し、そこから引き出された結論を再検討せよとアドバイスしている。