(3)グループとして問題に取り組ませる

有望な人材のグループに難しい問題を与えてその解決を求めることは、彼らの学習をスピードアップする効果的な方法だ。それによって彼らは部署横断的な人間関係を強化し、上級ポジションでの成功に欠かせない類の分析や説得や交渉に携わることができる。

ボストンに本社を置く経営幹部能力開発コンサルタント会社、フォーラム・コーポレーションの専務、ローナン・ノックスは、ビジネス上の難問を幹部候補グループの能力開発の機会として利用した企業の例を挙げる。その企業は地理的な近さではなく経済的な類似性に基づいて組織を再編することを検討していた。そこで、世界各地から集められた幹部候補グループを対象とする開発プログラムのなかで、この戦略を検討させたのである。

幹部候補たちは、どの国とどの国を1つのグループにまとめるべきか、経営陣をどのように再編するべきか、この再編はマーケティングにとってどのような意味合いを持つか、世界各地の研究開発施設や生産施設をどのように再編するべきか等々について提言をまとめるよう要請された。この任務は彼らのリーダーシップスキルや調査・分析スキルを強化し、複雑な情報を統合する能力を磨き、さらには取捨選択せねばならない諸要素を秤にかけ、合意に至るという面で貴重な経験になった。そのうえ、上級幹部チームからも注目される機会となった。

(4)社内の専門家から学ばせる

幹部候補と経験豊富な上級マネジャーの混合チームをつくることは、知識を次の世代に伝え、同時に幹部候補のスキルを開発する効果的な方法だ。

トマス・トマイは、人材コンサルティング会社、リー・ヘッチ・ハリソン、ニューイングランド支社の専務の職にあったとき、優秀な若手マネジャーと経験豊富なマネジャーの混合チームをつくって、新規クライアントを獲得するプロセスを見直す作業にあたらせた。若手マネジャーたちは大胆に変更した新プロセスを直ちに採用するべきだと主張し、それに対しベテランマネジャーたちは、数カ月かけて漸進的に変えていくという手法を唱えた。当初の議論ではどちらも自分の立場を譲らなかったが、結局は若手マネジャーが、段階的に新プロセスに移行するのが賢明な方法だと得心した。「誰もついてこなかったら、どれだけ迅速に行動しようと意味がない」という、ある幹部の言葉に彼らは反応したのだ。