(1)幹部候補であることをわからせる

有望な人材は、自分が幹部候補と目されていることを知らされるべきだ。

それは彼らが特定の能力を開発するための横の異動の価値を認識する助けになるからだ。「多くの場合、能力開発のための望ましい異動は、従来のような昇進という縦の異動ではなく、横のジグザグの異動だ」と、エグゼクティブ・リクルーティング会社、コーン・フェリー・インターナショナルの戦略・知財担当副社長、カーラ・カプレッタ・レイモンドは言う。

彼らに何も伝えなければ、競争相手に彼らを奪われる可能性が高くなる。

一方で、幹部候補という立場にあぐらをかいてはならないと彼らを戒めることも大切だ。幹部候補であることを伝えるのは、彼らが新しい挑戦に自信を持って取り組めるようにするためであって、うぬぼれさせるためではないのである。

(2)能力を複数の方向に伸ばす

有望な若手マネジャーに幹部MBAプログラムを受講させることはできるが、それはかなり時間のかかる学習である。より迅速な方法は、彼らのスキルの不十分な部分や欠けている部分を強化し、補完する、一連のより短期間のストレッチアサインメント(現在の能力より少し上の能力が要求される任務)を与えることだ。

ストレッチアサインメントはまったく新しい分野の職務である必要はなく、本人の通常の職務を補完する新しい任務であってもよい。たとえば、ほとんど業務畑で過ごしてきた有望なマネジャーには、クライアントともっと接触する必要のある職務を与え、それによって外部の視点から組織をとらえる能力を強化させてもよいだろう。

数年間の海外勤務は、長年にわたり多くの企業の幹部開発プログラムの必須要素とされてきた。しかし、それよりはるかに短期間の海外勤務でも十分な効果を挙げることができる。エリクソンのクライアントだった、ある大手保険会社は、有望な人材を3カ月間海外に派遣して、そこで新事務所の開設を手助けする任務にあたらせている。このプログラムの参加者たちは、アメリカに戻ってからも引き続きその海外事務所の運営に関与し、現地スタッフと緊密な接触を保っている。