日本人プロテニスプレーヤーとして世界の舞台で数々の記録を達成した杉山愛さんは、現在もテレビのコメンテーターをはじめ、多彩な分野で活躍中だ。引退後も変わらないポジティブさの源について、イーオンの三宅義和社長が聞いた——。(第1回/全3回)
元プロテニスプレイヤーの杉山愛氏
撮影=原貴彦
元プロテニスプレイヤーの杉山愛氏

少しずつでもいいので自分を成長させていく

【三宅義和(イーオン社長)】テレビや雑誌などで拝見する杉山さんといえば、「とにかくポジティブで、いつも笑顔」という印象が非常に強いです。明るさを維持する秘訣と言いますか、なにか心がけていらっしゃることはあるんですか?

【杉山愛(元プロテニス選手)】私自身が常にポジティブでいられているわけではないんですけれども、現役時代から大事にしているひとつの柱が「自分のプレーを通じて観客のみなさんに元気や勇気を与えたい」「プラスのエネルギーを感じてもらいたい」ということです。それは引退後も一貫していて、メディアを通して私がなんらかの情報を発信するときは、少しでも明るい気持ちになってもらいたいということを意識しています。

【三宅】そういう思いがあるのですね。

【杉山】あと、もうひとつ大事にしている柱があります。これは私が25歳のときに経験したスランプ以降に自分に与えた課題でもあるんですけれど、「どんな困難であってもしっかりと向き合い、少しずつでもいいので自分を成長させていくこと」。これも常に意識しています。

【三宅】そうでしたか。

【杉山】逆に心を強くするためですね。もちろん、いまでも心が折れそうになったりすることはあります。でも、そんなときに「これはきっと自分が成長できる機会なんだ」と解釈するようにすると、「ちょっと頑張ってみようかな」とモチベーションが湧いてくるんです。

個々の人生哲学が問われる時代に

【三宅】心が折れるといえば、新型コロナの影響が各方面に出ています。

【杉山】そうですね。私も神奈川県茅ヶ崎にある自分自身のテニスクラブの運営にもっと力を入れようと思って動いていた矢先のコロナ禍で、ストレスを抱え込むような感じですけれど、落ち込んでいるだけでは事態はよくならないので、いろいろ前向きに試行錯誤している最中です。

【三宅】こんな状況下で心折れずにどう生きていくかというのは、人類共通の課題なのかもしれませんね。

【杉山】本当にそう思います。個々の人生に対する哲学がより問われるということは、今回感じましたね。