図書館ダッシュが懐かしい。学生時代の話である。大学の掲示板でたとえば「男女雇用機会均等法を社会学的に考察せよ」というレポート課題が発表される。それを見た学生は、次に何をするか。私たちは図書館へ走った。参考になりそうな本を見繕って借りるためである。課題にぴったりの本はそう多くない。この競争に敗れると、地元の図書館に向かうか、高い本をわざわざ買うか、いずれにせよ面倒なことになるので必死だった。

こんな25年前の話を今の学生にすると、きょとんとされてしまう。「ああ、昔はネットで調べられなかったからですね」。当時の苦労は理屈ではわかるけれど、感覚としては掴みにくいようだ。それは、現在の中高年世代が、親から戦中戦後の苦労話を聞かされたときの感じにちょっと似ているかもしれない。