本書はNHK報道局が総力を挙げて製作した「環境で不況を吹き飛ばせるか~グリーン・ニューディールの挑戦~」(2009年3月19日放送)を中心に、放送できなかった内容を盛り込んでいる。本書から、サブプライム・ショックで世界が新たな次元に突入したことがよく理解できる。

本書の冒頭で紹介されているオバマ大統領の就任演説、すなわち「われわれのエネルギーの使用方法が、われわれの敵をますます強大にし、地球を脅かす」(7ページ)でわかるように、アメリカは環境、あるいはオバマのいう「グリーン・エコノミー」を国家戦略の最優先に据えた。それとは対照的に、本書の第II部で述べられている日本政府の環境戦略に関する姿勢は各省庁の縄張り争いが目立ち、立ち遅れている。日本企業が有する個々の環境技術は優れているのに、それを社会インフラとしてどう構築していくかという視点が欠落しているようである。