昨年、日韓の間でこじれにこじれた韓国「ホワイト国外し」騒動。1年以上が過ぎ、韓国や世界の半導体産業に“影響した”のは本当か?
約1年前、韓国で日本の半導体材料輸出規制強化に反発した日本製品不買運動が起こった。
写真=YONHAP NEWS/アフロ
約1年前、韓国で日本の半導体材料輸出“規制強化”に反発した日本製品不買運動が起こった。

「日本とは違う道を歩む」文在寅が自信

今年7月9日、韓国の文在寅大統領が同国の半導体メーカー、SKハイニックスを訪問した。京畿道利川市にある同社で、「(輸出規制は)韓国経済にとって大きな打撃になるだろうという懸念があったが、共に力を合わせ、これまで1件の生産支障もなく、危機をうまく克服してきた」と自信のほどを見せ、「日本とは違う道を歩む」「グローバル先端素部装大国へと飛躍していく」と胸を張って見せた。

これは約1年前の日韓の軋轢を意識した発言である。昨年7月1日に日本が韓国に対して行った輸出管理の「制度運用の見直し」。フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)という半導体材料を包括輸出許可から個別輸出許可に切り替えると発表した。いずれも日本が世界シェアの70~90%を独占し、しかも韓国産業の生命線である半導体製造に不可欠な素材だ。

経済産業省によれば、この措置を取った理由は、①日韓間の信頼関係の喪失、②韓国の輸出管理における不適切な事案発生の2つ。2018年の国連北朝鮮専門家パネル報告書には、北朝鮮向けに船舶用ディーゼルを積み込まれた船をめぐる調達ネットワークについての記載が、2019年の同報告書には韓国が開城(ケソン)の南北共同連絡事務所に石油精製品を持ち込んだ件についての記載があり、そもそも韓国が戦略物資を扱うことには日本側から疑念がいくつもあったようだ。

それだけではない。昨年5月17日付で朝鮮日報が156件の不正輸出事案一覧(うち5割が化学・生物兵器関連、大量破壊兵器関連が3分の2。2016年から3年で3倍に)を明らかにし、発表直後の7月12日には、韓国国会の予算特別委員会の質疑で、逆に日本向けに輸出されたというフッ化水素が日本の輸入統計に計上されず消えてしまっていることを野党議員が指摘している。さらに韓国の半導体企業が日本から輸出した高純度フッ化水素を、韓国工場以外に中国の現地工場に再輸出していたとも報じられた(日経新聞2019年7月20日付)。