イスラエル独自のエリート教育、その成り立ちと本質

近年、イスラエルに世界の注目が集まっている。ITに限らず自動車、医療、農業など様々な分野で優れたイノベーションが数多く創出されていることが注目されている。

新井 均『世界のエリートはなぜ「イスラエル」に注目するのか』(東洋経済新報社)
新井 均『世界のエリートはなぜ「イスラエル」に注目するのか』(東洋経済新報社)

私自身も今や米MITに比肩されるほど有名になったイスラエル工科大学(テクニオン)とは深い関係があり、イスラエルが持つ高い技術力には常々注目してきた。そんな中で、イスラエルの大飛躍の秘密を紐解く本を見つけたので紹介したい。

元研究者である著者は、自らもイスラエル技術を利用してビジネスを起こした経験を持ち、既に13年間にもわたってイスラエルと付き合ってきた。陰陽両面の実体験としてイスラエルを熟知しており、ここ数年のイスラエルブームに乗った者とは経験値が異なる。その経験を通して見たイスラエルの強さの源泉は、「独自のエリート教育」にあると考え、その成り立ちと本質を見事に解明している。

「タルピオット・プログラム」と呼ばれるこのエリート教育は、優れた資質を持つ18歳の若者、わずか50名を全国から大変な手間をかけて選抜し、通常なら4年間かかる大学教育の内容を3年間で集中して学ばせ、エリート技術者を育てるのである。この選抜課程とプログラム内容の章を読むだけでも、日本との違いに読者は驚くであろう。