占いや観相学ではない「相貌心理学」とは何か?

カバーや帯に女性著者の写真が載った本の多いこと。そういう写真はおしなべて知的美人風だ。この本は知的なビジンが書いているんですよ、さあいかがですというあざとい付加価値(筆者の僻みである)を乗せてその本は売られ、買われていくのである。人は顔じゃないぞ心だ、などと言ってみたところで、それほどに顔が訴え、あるいは囁きかけるものは大きい。

佐藤ブゾン貴子『人は顔を見れば99%わかるフランス発・相貌心理学入門』(河出書房新社)
佐藤ブゾン貴子『人は顔を見れば99%わかるフランス発・相貌心理学入門』(河出書房新社)

この本のタイトルだって『人は顔を見れば99%わかる』と断言しているではないか。99%もわかっちゃうのである。やだ困る。かつて自著タイトルで『女子の生き様は顔に出る』とぶち上げた私としては看過できぬ。だからこそ、この本の帯に掲載された著者「1億人以上の分析に基づくフランス生まれの“顔”の心理学」を紹介する「日本人初の相貌心理学教授」のご尊顔が、決してステレオタイプなお若い美人なんかではないところに、内容への揺るがぬ自信を感じられる一冊である。

人間誰しも、年を取って経験を積むにつれ、顔を見ればなんとなく相手の性格などを感じ取れるようになるもの。だが相貌心理学とは「学問であり、占いや観相学ではない」と著者は書く。相貌心理学とは、「1937年、フランスの小児精神科医でもあり臨床心理学者でもあったルイ・コルマンによって、顔と精神(内面)、顔と性格の相互関係を研究対象としてつくり上げられた学問」。