いま、新型コロナウイルスの拡大により、世界経済が揺れている。コロナ禍において、もっともその打撃を受けている国の一つが韓国だ。最大輸出相手国である中国が景気鈍化している中で、貿易依存度の高い同国では、外国人の投資が流出しウォンが大幅下落。3月19日、韓国銀行はこの救済措置のために、米国FRBと約6兆6600億円(600億ドル)規模の通貨スワップ協定を締結した。これは韓国で通貨危機が起きた際、自国通貨の預け入れと引き換えに、米国の通貨を融通してもらえる協定のこと。「しかし、それでも韓国経済の低迷は止まらないでしょう」そう解説するのは人気アナリストの馬渕磨理子氏。氏によると、低迷が予想される韓国経済の根本問題は、コロナ不況ではないという。一体、韓国にいま、何が起こっているのか。日本にはどんな影響が出てくるのか。先日総選挙が行われ、政権与党が圧勝を収めた文在寅(ムン・ジェイン)政権に立ち込める暗雲を解説する。
日韓の国旗とコイン
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
※写真はイメージです

高まる反日感情。しかし、日韓通貨スワップ協定を匂わせる謎

4月現在、韓国経済が新型コロナウイルスの感染者数の拡大により“泣きっ面に蜂”状態であることは前回述べました。

韓国は引き続きドルが不足していることに変わりありません。最近、韓国政府は日本に通貨スワップを暗に求めてきましたが、締結には至っていません。しかし、依然国内では反日感情を持つ国民が一定数いるにもかかわらず、同国が日韓通貨スワップの要望を言い続けているのはなぜでしょうか。

その背景には、文在寅政権に政治的な思惑があります。4月15日に行われた韓国の国会議員選挙(総選挙)は、与党が圧勝という結果となりました。

先に文政権が勝利した理由を先に述べます。勝利の理由は、選挙を実施したタイミングがコロナ禍の“今”だったからです。総選挙前の文政権の言動を振り返ると、ドル不足に苦しむ国内の金融界や企業の要望に対し、文政権は“理解を示す姿勢”を取り続けていました。

その根拠として彼は日韓通貨スワップ協定を匂わせていました。ただ、今回の選挙は、経済や安全保障の問題よりも新型コロナウイルスの対策が争点となっていたのです。