新型コロナウイルス対応で、中国のメガテック企業「テンセント」が大きな役割を果たしている。立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏は「テンセントがつくった特設サイト『COVID‐19と戦う』はすごい。同社は『AI×医療』の分野で中国政府から委託を受けており、その底力が発揮されている」という――。
※本稿は、田中道昭『経営戦略4.0図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を加筆・再編集したものです。
対コロナで活躍した「中国らしいテクノロジー」
新型コロナウイルスの感染拡大が世界各国で依然深刻な状況にある中で、4月8日、中国湖北省武漢市の「都市封鎖」が77日ぶりに解除されました。
新型コロナウイルスに対して中国政府が透明かつ迅速な初期対応をとらなかったことについては、米国などから厳しい批判が集まっています。中国政府もまだ十分な説明責任を果たしていません。
しかし、新型コロナウイルス対策へのテクノロジーの利活用という点では、中国の対応は特筆すべきものがありました。大胆な隔離政策では「中国らしい」、人々を監視するテクノロジーが活躍しました。
特に、人々の感染リスクの判断や管理には、アプリを通じて収集された位置情報や移動履歴、家族関係といった個人データが使用されています。また、アリババや平安保険など中国のテクノロジー企業は、コロナショックを、AI診断システムやスマート画像読取りシステムなど最先端デジタルテクノロジーの社会実装への絶好の機会とも捉えています。