LINEとほぼ同時期に「ウィーチャット」をリリース

そして2011年1月、ついに「ウィーチャット(WeChat)」がスタートします。基本的にスマートフォンでチャットとSNSを使えるようにしたアプリで、ほぼ同時期にリリースされた日本の「LINE」にかなり近いサービスです。

こうしてみると、テンセントは、オンラインのコミュニケーションサービスを世界の時流に遅れることなく、タイミングよく展開していることがわかります。2018年12月末時点で、「QQ」のユーザー数(MAU/月間アクティブユーザー数)は、8億710万人に上ります。中国の総人口は約14億人なので、「QQ」がほぼ国内でしか使われていないことを考慮すると、中国人の60%近くが「QQ」を使っていることになります(ただし、ここ数年のユーザー数では頭打ちになっています)。

テンセントVSフェイスブック。コミュニケーション・アプリの覇権争い

また、WeChatは、200の国と地域をカバーしているとされ、MAUは10億976万人となっています。この数字は、サービス内容および機能が近い「フェイスブックメッセンジャー」の全世界でのMAU約13億人を下回るものの、「LINE」の主要4カ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)の1億6400万人を大きく上回っています。したがって、テンセントはアジア地域のコミュニケーション・プラットフォームを握っている企業といっていいでしょう。

売上高の3分の1を占めるゲーム事業

では、一体テンセントはどんな事業で収益を上げているのでしょうか? テンセントの直近の決算をみてみましょう。2018年12月期の通期の売上高は、447億ドル(4兆9170億円)です。売上高の内訳は、次の3つの部門に分かれています。

①「デジタルコンテンツ」252億ドル(2兆7720億円)
②「広告」83億ドル(9130億円)
③「その他」112億ドル(1兆2320億円)

売上高がいちばん大きい①「デジタルコンテンツ」とは、基本的に「QQ」や「WeChat」のユーザー向けに提供するオンラインゲームや動画、音楽、書籍、ニュースなどのコンテンツのことです。それにユーザーが課金をすることで売上となります。この付加価値サービスにはさらに2つの項目があり、1つは、「PC/スマートフォンゲーム」事業で149億ドル(1兆6390億円)、2つ目が「SNS」事業で103億ドル(1兆1330億円)です。

テンセントの売上高ポートフォリオ

つまり、テンセントの売上高でもっとも大きいのがPC/スマートフォンゲーム事業であり、全体の3分の1を占めていることがわかります。したがって、テンセントのビジネスモデルは、インスタント・メッセンジャーなどのコミュニケーション・アプリで集客をし、オンラインゲームで収益を上げる構造になっているといえます。