よく眠ったはずなのに、昼間に睡魔に襲われることはないだろうか。スタンフォード大学医学部精神科の西野精治教授は「眠気が強すぎて起きていられない『睡眠障害』の中には金縛りや、失神したように突然眠ってしまう症状もあり、軽く見てはいけない」と指摘する――。

※本稿は、西野精治『睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する』(角川新書)の一部を再編集したものです。

オフィスの昼寝
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健康な人でも睡眠不足が続くと起こりやすい

不眠と過眠は表裏一体なものです。

夜に眠れない日が続くから、昼間に眠くなります。逆に、昼間に居眠りすることが多くなれば、夜に眠れなくなります。

しかし、過眠症の患者さんの主訴は「日中眠くなる」というものが大半であって、その本当の症状を知ることは簡単なことではありません。不眠症と同じように、除外診断で考えられる原因を一つひとつ潰していかなければ、本当に眠くなる理由を突き止めることはできないのです。

過眠症は、「夜に十分に睡眠を取っているのに昼間の眠気が強く、起きていられない状態が続く」症状です。

健康な人でも睡眠不足が続くと、昼間に強い眠気が出現することがあります。打ち合わせをしているときや、取引先との商談中に、意識が飛んでハッとしたことがありませんか? ほんの数秒ですが、こうした瞬間的に意識脱落状態になることを「マイクロスリープ」と言います。

ほんの数秒ならまだいいのですが、なかには眠気が強過ぎて、起きていられない状態になることも。それが、過眠症です。過眠症になると、仕事や勉強に支障をきたすだけでなく、自動車を運転していたり、産業機械を操作していたりすると、大きな事故を招くリスクが高まります。