日本では肥満気味の人ばかりではなく、女性でも、子どもでも発症しています。これは、アジア系人種特有の骨格が原因ではないかとされています。下顎が欧米人より小さく奥まっているため、骨格的にもともと気道が狭くなっているのです。

失神したように突然眠る「ナルコレプシー」とは

睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などとは異なるタイプの過眠が、わたしの研究の専門分野でもあるナルコレプシー。慢性の睡眠不足ではなく、睡眠を阻害するような病気もなく十分に睡眠が取れているのに、昼間に強烈な眠気に襲われ、失神したように突然眠ってしまうという怖い病気です。

ナルコレプシーの情動脱力発作

その人と対峙している人はびっくりですが、10~15分間ほど眠ると目覚め、また2~3時間すると、同じように強い眠気が出現します。

ナルコレプシーには、過眠以外の症状も現れます。

ひとつは、情動脱力発作。笑ったり、怒ったり、恐怖を感じたりなどの感情の高ぶりがあるときに、全身の筋肉の脱力が起きる症状です。たとえば、笑っているときに、突然、全身の力が抜けて、頭がグラグラ揺れたり、ろれつが回らなくなったり、まぶたが下がったり、ときには腰が砕けるように崩れ落ちることもあります。

もうひとつは、金縛りです。これはレム睡眠の異常と関係していて、通常、レム睡眠は入眠してから70~100分くらいしてから出てきますが、ナルコレプシーの場合は入眠初期に出てきます。

覚醒を引き起こす神経細胞が機能しなくなる

入眠時にうとうとしているときに、近くに誰かが座っていたり、天井から誰かが出てきたりといった幻覚を見ることもあります。声を出したいけれど、睡眠麻痺で体が動かない状態になっているので声が出ないし、体も動きません。

金縛りに関しては、生活パターンが乱れたりすると健常な人にも起きる現象で、起きたからといって異常というものではありません。

ただ、幻覚や金縛りの症状があることで、ナルコレプシーの病態が明らかになるまではヒステリーの一種として精神疾患に分類されたこともありました。

現段階ではっきりわかっていることは、発症のメカニズムです。

ナルコレプシーは、視床下部にあるオレキシン神経細胞が後天的に脱落することで、オレキシンの神経伝達障害が起きます。オレキシン神経細胞の脱落は、腰椎穿刺による脳脊髄液の検査で、脳脊髄液中のオレキシンの異常低値が認められれば臨床的に診断できます。オレキシンは覚醒を引き起こし、レム睡眠の出現を強く抑える物質なので、機能しなくなると正常な覚醒が維持できなくなり、レム睡眠の異常も出現します。

しかし、その原因まではまだわかっていません。自己免疫の機序で脳のオレキシン神経細胞が脱落することは想定されていますが、なにに対する自己免疫なのかがわかっていないのです。