最近のスマートフォンの多くは、色味を変えてブルーライトを軽減する「夜間モード」を備えている。これは睡眠の改善に効果があるとされているが、本当なのか。スタンフォード大学医学部精神科の西野精治教授は「わたしはブルーライトの光よりも、寝る前にスマホを使うこと自体が睡眠に悪いと考えている。機能を過信しないほうがいい」と指摘する――。

※本稿は、西野精治『睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する』(角川新書)の一部を再編集したものです。

新世紀の真夜中の儀式
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日本人女性の睡眠時間はあまりに短い

日本人の睡眠時間が世界のなかでも最短だということは何度か述べてきましたが、とりわけ女性は短いとされています。

「平成28年社会生活基本調査」(総務省統計局)によると、日本人女性の平均睡眠時間は7時間35分。男性と比べると10分短くなります。仕事をしている女性になると、さらに短く、平均7時間15分。ある企業の調査によると、子育てと仕事を両立しているワーキングマザーの平均睡眠時間は6時間36分。平均よりも1時間近く睡眠を削られる生活をしているということです。その調査のなかで「削らざるを得ない時間」として1位に挙げられたのは、睡眠時間でした。

高度成長期だった頃の日本は、家庭を守る専業主婦というものが主流でした。家事や育児を一手に引き受けていたのが女性だったのです。しかし、男女雇用機会均等法の施行など、女性の社会進出があたりまえになり、1997年以降は共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、いまでは6割強が共働き世帯になっています。

問題なのは、共働きなのに、夫婦間での役割分担が欧米ほど進んでいないことでしょう。相変わらず家事や育児を奥さんに任せきりの家庭も多く……、女性は睡眠時間を削るしかない状態にあると言えます。

男女比較で見たときに女性の睡眠が短いのは、日本のほかにインド、韓国、メキシコなどが該当します。一方、欧米では女性のほうがよく寝ています。

【図表】睡眠時間の男女差

生物学的に言うと、動物の場合、雌雄で睡眠の量に差はありません。人間の場合は、思春期と言われる第二次性徴のタイミングは少しだけ女性が早いため、男性が第二次性徴を迎えるまでのあいだこそ男性のほうが睡眠量は少し長くなりますが、その後は、ほとんど差がないと考えていいでしょう。そうなると、やはり日本の女性の睡眠時間はあまりに短いのです。