いつまでも元気に動ける体を手に入れるためには、どうすればいいのか。NHK「みんなで筋肉体操」などで運動の効果を解説している谷本道哉・近畿大学准教授は、「日常生活に必要な筋肉ほど、早く衰える。だが、筋肉は死ぬまでつく。何歳でも筋トレをするべきだ」という——。

※本稿は、谷本道哉『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

ジムでバーベル上げをするアクティブな年配の男性
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日常生活に必要な筋肉ほど、早く衰える

加齢に伴って筋肉がやせ衰えていくことを「加齢性筋萎縮症」、「サルコペニア」といいます。なんだか恐ろしい響きですね。

そしてサルコペニアはやっかいなことに、体重を支える下半身の筋肉や、姿勢を支える腹筋群、背筋群といった「日常生活に直結した筋肉」において激しく進行します。元気に日常生活を自立して過ごすための大事な筋肉ほど衰えやすいのです。

たとえば、体重を支える太ももの前の筋肉では、30歳代くらいから萎縮し始め、80歳くらいまでに、平均して20歳代の半分程度にまで筋肉が細くなります。

筋力の強さは主に筋肉の太さで決まりますので80歳で脚の筋力は半分になってしまう計算になります。太さ以外の要因もあるので正確には半分以下ですが。

ということは、若いころに片足で立ち上がれないくらいの筋力しかない人は「特に対策をしていなければ」80歳になったときには自立して生活するのが困難になる、と言い換えられるでしょう。70歳まで働かなければならない時代に、これはとても不安な予測です。

脚の筋肉の衰えは特に顕著であるうえに生活機能と直結します。その衰えを自覚しやすいことから、「老いは足元からやってくる」などといわれます。「足腰を鍛えていつまでも元気に」などというのも、足腰の衰えが高齢者から元気さを奪うからに相違ありません。

それゆえいつまでも活動的で元気に過ごすためには、サルコペニア、特に脚の筋肉のサルコペニアをいかに防ぐかが極めて重要となるのです。